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特集

地球の悲鳴
廃棄パソコンは
どこへ行く

JANUARY 2008


 半導体メーカー、インテルの共同創設者であるゴードン・ムーアは、いまから40年以上前に、いわゆる「ムーアの法則」を提唱した。コンピューターの処理能力は2年で2倍になる、というものだ。この法則に従うならば、どんな最新鋭の機器も売りだされた途端に陳腐化する。米環境保護局の推計によると、この先数年間にわたって、毎年3000万~4000万台のパソコンが使われなくなるという。

 陳腐化の波に追いたてられているのは、パソコンだけではない。米国では、2009年にテレビ放送がデジタルに移行すると、アナログ放送専用のテレビは使えなくなり、買い替えに伴って、毎年2500万台のテレビがお払い箱になる。また、新機種が次々に登場する携帯電話市場では、米国だけで2005年に9800万台が用済みになった。

 日本も同様で、2011年に地上デジタル放送へ完全に移行すれば、最大6400万台のテレビがゴミになると予測されている。携帯電話は2006年度に660万台がリサイクルされているが、割合としてはまだ少なく、多くは手元に残されたり捨てられているようだ。

 国連環境計画(UNEP)によれば、全世界で使用済みになる電気製品の量は、年間5000万トンにのぼるという。

 この大量のゴミはいったいどこへ行くのか?

 米国の場合、電気製品の投棄を禁止する州が増えているにもかかわらず、使用済みのパソコンやディスプレイの70%以上、テレビでは実に80%以上が埋め立て処分されるという。その結果、鉛、水銀、ヒ素、カドミウム、ベリリウムなどの有害物質が土壌にしみこむおそれがある。

 一方、屋根裏部屋や地下室でほこりをかぶっている古い電気製品もかなりの数にのぼる。だが、使わずにしまいこんでおけば環境にやさしいというわけでもない。電子機器には、有毒物質だけでなく、金や銀など電気伝導性の高い、希少な有用金属も使われている。理論上は、熱帯雨林を切り倒して露天掘りをするよりも、パソコンのマザーボードから金を取りだすほうがはるかに効率的で、環境への負荷も小さいのだ。

 現在、米国でリサイクル業者を通じて正規の回収ルートに乗せられる使用済み電気製品は、全体の20%にも満たない。それでもカリフォルニア州のように、埋め立て投棄に厳しい姿勢で臨む自治体が増えれば、この割合は上昇するだろう。ただしリサイクルの現状は、こうした建前ほどクリーンなものではない。なかには環境汚染や健康被害を最小限に抑える努力をしているリサイクル業者もいるが、大多数は、そのままブローカーに横流しをする。そして不要になった電気製品は、環境法がきちんと整備されていない開発途上国に運ばれていくのだ。

 電気製品のゴミは、処理を誤れば環境を破壊する。この事実を認識している国々は、国際的な規制の網をかける努力を始めている。

 現在170カ国近くが締結している1989年のバーゼル条約では、有害廃棄物を輸送する際、先進国が開発途上国にその旨を通知することを義務づけている。また、この規制では実効力がないと考えた環境保護団体や開発途上国の働きかけで、1995年には、貧しい国々への有害廃棄物の輸出を全面的に禁止するよう条項が修正された。この禁止条項はまだ発効していないが、EU(欧州連合)はすでにそのための要求事項を法律に明文化している。

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