/2007年12月号

トップ > マガジン > 200712月号 > 優雅なる空の王者 アホウドリ > 取材現場から


定期購読

ナショジオクイズ

Q:森林火災を防ぐため、オーストラリア先住民の人々が復活させた伝統的手法とは?

  • 火入れ
  • 植林
  • 放牧

答えを見る



特集

優雅なる空の王者
アホウドリ

DECEMBER 2007

取材の現場から

筆者の取材ノート
カール・サフィナ
写真=Frans Lanting
最近、アホウドリに関する著書を出されましたが、アホウドリに興味を持ったそもそものきっかけは何ですか?

10代の頃、釣りをするときには、まずアジサシを探し、その後を追って魚を見つけていました。後年、アジサシの研究で博士号をとり、その過程で他の海鳥たちにも惹かれていったんです。中でもアホウドリはとりわけ大きく、目を引く鳥でした。もともとわたしは、マグロやサメ、ウミガメなどの大きな海洋生物が好きでしたし、著書にはこういった生物をすべて登場させました。彼らの中に、男のロマンみたいなものを感じていたのかもしれません。でも、1991年に開かれた鳥類関連の会議で、タグをつけたアホウドリを初めて衛星追跡した結果を見たとき、その飛行距離の長さに度肝を抜かれたんです。孤島にある巣の中でお腹をすかせて待っているヒナに、たった1度食事を与えるためだけに、彼らは最長1カ月かけて往復1万6千キロを飛ぶのです。アホウドリこそ、わたしが書きたかったこと──海はどう変化しているのか、それが野生生物や人間にとってどういう意味をもっているのか──を表現できる、あつらえむきの題材だと確信しました。こうして、私の本『Eye of the Albatross』が生まれたのです。

特にお気に入りのアホウドリはいますか?

ハイイロアホウドリやハイガシラアホウドリなどは、その淡く繊細な色合いとエアブラシで描いたような模様が気に入っています。羽毛目当てに500万羽が虐殺されてなお生き延びた、アホウドリもいいですね。彼らは20年近くもの間、絶滅したと考えられていましたが、突如として6羽の生き残りが故郷の島に姿を現しました。その間、彼らはずっと海で暮らしていたんです。どのアホウドリにも共通する魅力は、優美な飛行姿と、吹き付ける風や嵐をゆうゆうと超えていく力強さです。一番のお気に入りは、そうですね、名前と大きさで選べば、ワタリアホウドリでしょうか。シロアホウドリも、大きく輝いて見えるその姿と、頭上すれすれに飛んでいくときにジェット機のような音を立てるところが大好きです。

取材中、危険な目にあったことはありますか?

ニュージーランドの亜南極諸島のひとつキャンベル島では、キャンベルアホウドリの大きな営巣地がある島の突端の崖まで、一日がかりで歩かなければなりませんでした。あのくらいの高緯度地域ではどこも暴風が吹き荒れていて、だからこそアホウドリの生息地になっているわけです。その日の風は想像を絶する激しさで、わたしたちはほとんど地面から起きあがることもできませんでした。突風にあおられ、幾度も地面に叩きつけられました。あるとき、吹きすさぶ強風に耐えながらステッキを手にふんばっていると、突然、一層猛烈な風が吹き付け、わたしは23キロの荷物ともども、棒高跳びでもしているかのように空に舞い上げられました。荷物を背に四つんばいになって進み、ステッキを拾ってなんとか立ち上がりました。あまりの風に、ぞっとする思いでした。まるで突風が殴りつけてくるような感じなのです。一時は「とてもたどり着けない」と思いました。しかしそのうち、ひたすら前に進んでいればなんとかなるという気になり、そしてついにはやり遂げました。実際、苦労したかいのある取材ができました。

取材中に出会った熱心な研究者たちの中で、特に印象に残った人物は誰ですか?

グラハム・ロバートソンです。アホウドリに関する資料の作成、広報、資金集め、保護問題の解決への取り組みなど、彼は多大な貢献をしています。各国の漁師と一緒に海へ出て、何週間も続く苛酷で危険な航海に身を投じ、自然保護関係者や世界の目をアホウドリに向けさせるための原動力となってきました。ロバートソンはすすんで情報を提供し、電話やメールで快く時間をさき、この取材に大いに力を貸してくれました。彼については記事の中で言及したいと思いつつ、結局果たせなかったので、この場を借りてお礼を言いたいと思います。

今回の取材で訪れた数々の素晴らしい場所のうち、もう一度行きたいのはどこですか?

その質問はまるで、自分の子どもたちの中でお気に入りは誰かと聞いているようなものですね。どの場所もそれぞれに素晴らしかったのですが、特に印象的だった場所が2カ所あります。キャンベル島は、荒々しい自然と荘厳な雰囲気、そして島に暮らす見事なシロアホウドリが魅力です。ミッドウェー環礁は、圧倒的な美しさと溢れんばかりの生命力、多種多様なウミドリ、イルカ、ウミガメ、色鮮やかな珊瑚礁の魚たち、そして優しいそよ風が印象に残っています。

アホウドリの勇姿を見に行くのに、おすすめの場所はありますか?

米国本土から離れずにアホウドリを見るなら、カリフォルニア州モンテレーから沖に出るバードウォッチングツアーがいいでしょう(参照ウェブサイト:montereyseabirds.com.)。ニュージーランドのカイコウラでは、海岸からほど近い海で多様なアホウドリに出会えます(http://www.oceanwings.co.nz/albatross/ocean_wings/)。
ニュージーランドの南に浮かぶ島々や、
(取材班は代理店「ヘリテージ・エクスペディションズ」を利用。 http://www.heritage-expeditions.com/
ドレーク海峡を挟んだ南極半島、サウス・ジョージア島、ガラパゴス諸島なら、どこでもアホウドリが見られます。ミッドウェー環礁へは、一般人の立ち入りが再び許可された際には、ぜひとも行って欲しいですね。

一番危険な場所はどこでしたか?

旅行中、最も危なかったのは、ニューヨークの空港までのドライブでした。

海の現状をかんがみた上で、アホウドリに未来はありますか?

アホウドリが直面している最大の問題は、漁船が使用する装備です。わたしの見るところ、ここ数年だけでも、技術的な改善により問題は解消されてきています。10年前には、アホウドリが漁網に巻き込まれて死なないよう遠ざけておくための方法が見つかっていませんでした。今は違います。複数の大手水産業者が、漁師たちにアホウドリに対して安全な漁網を使うよう指導しています。とはいえ、この手法がまだ導入されていない大きな漁場もありますし、特に南半球のマグロ漁や、未だになくならないマゼランアイナメ(日本では“メロ”と呼ばれる)を狙った大規模な不法操業は問題です。我々がこれまで学んできたことを、アホウドリの生息域で活動するすべての漁船に生かすことができれば、アホウドリは漁網の危険から解放されるでしょう。アホウドリの保護活動は、ここまで進んでいるのです。

魚介類とアホウドリ、どちらも好きな人が罪悪感を感じずに食事を楽しむにはどうしたらいいでしょう?

複数の団体が、魚介類のサステナビリティ(持続可能性)評価に関する情報を提供しています。わたし自身、そういった手引き書の最初の一冊や、魚介類のポケットガイドを書きましたし、またわたしが設立した団体「ブルー・オーシャン・インスティテュート(http://www.blueocean.org/)」のホームページからは、各魚介類に関する詳細な評価情報をダウンロードすることができます。さらに、ブルー・オーシャン・インスティテュートは先日、フィッシュフォンというサービスを開始しました。これは、米国初の、魚介類のサステナビリティに関するテキストメッセージサービスです。同時に、操作が簡単で情報のダウンロードもできる携帯サイト(www.fishphone.org)も立ち上げました。環境問題に興味があり、携帯やPDAを使いこなせるというハイテクユーザーはこちらも利用してください。フィッシュフォンは、レストランやスーパーへ行ったときや料理をする際に、健康によく、持続可能性の高い魚を十分に理解して選びたい人たちが、自分と環境にとってよりよい魚を判断する手助けをします。


ナショナル ジオグラフィック バックナンバー