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特集

優雅なる空の王者
アホウドリ

DECEMBER 2007


世界最大の繁殖地

 ハワイ諸島の北西端に近いミッドウェー環礁では、アホウドリのヒナたちが“卒業式”を迎えようとしていた。面積わずか6平方キロほどの米国立ミッドウェー環礁野生生物保護区は、コアホウドリの世界最大の繁殖地。約50万組のつがいがここで産卵する。1909年に、当時のセオドア・ルーズベルト大統領は、羽毛目当ての日本人狩猟者によるアホウドリ乱獲を受け、周辺諸島を野鳥保護区に指定。さらに、監視を強化したため、北太平洋に生息するアホウドリは絶滅を免れた。いまだにアホウドリのいない島もあるが、保護区本部があるミッドウェー島では、至る所にアホウドリを見かける。

 夜が明けると、海岸に何十万羽もの幼いアホウドリの姿が浮かび上がった。生後ずいぶんたつが、ヒナたちはまだ飛ぶことができない。この時期は、多くのヒナにとって生死の分かれ目となる。島には、ガチョウほどの大きさのヒナの死骸が散乱していて、そのうち数羽は翼に奇形が確認された。建物からはがれた鉛入りの塗料を食べたせいだろう。多くの死骸からはライターなどのプラスチックゴミも出てくる。親鳥が海で飲み込み、餌と一緒に与えてしまったのだ。飢えや暑さが原因で死んだヒナもいる。

 それでも幸い、生き残るヒナのほうが多い。そよ風が吹き抜けるたびに、アホウドリたちは翼をはためかせる。特に強い風が吹くと、ヒナたちは一斉に翼を動かし、その具合を確かめてみる。やがて砂浜を駆け出すと、何度も何度も砂の上を助走して、ようやく砂を蹴る音が消え、空を舞う瞬間を迎える。だが、生まれて初めての飛行はすぐに終わってしまう。翼でうまく風をつかまえられずに四苦八苦するヒナの頭上では、親鳥が悠然と滑空している。

 あいにくこの日は、若鳥が飛ぶのに適当な風はまったく吹いていなかった。「水平線を目指したい」――その一心で、若鳥たちは海に入り、翼を帆にして礁湖を泳いで渡りはじめた。次々と静かな海に入っていく。数時間後、集団の先頭が視界から姿を消した。毎朝、この海岸からは1万3000羽もの若鳥が巣立っていく。

 若鳥たちはいったいどこへ行くのだろう。私たちは、生物学者のジョン・クラビターとともに船で礁湖の外に出た。すると、おびただしい数のアホウドリが海面を埋めつくしていた。海風に乗って飛ぼうとする鳥もあちらこちらにいたが、大半の鳥はゆったりと波間にただよっているだけで、環礁から遠く離れようとはしなかった。外洋に出るのがまだ不安なようで、飛び立ったものの方向転換し、あわてて引き返してくる鳥もいた。

 しばらくすると、多くの鳥は環礁を出て、紺色にうねる海原の上空へと飛び立っていった。彼らの故郷である北太平洋に、戻ろうとしているのだ。ヒナたちの卒業式は、こうして終わった。

 今後数カ月間は、生きていくために必要な餌を調達できるようになることが最大の課題だ。インド洋での調査によると、巣立ち後の2カ月間で約4割のヒナが命を落とすという。若鳥がどうやって餌のとり方を覚えるのかはまだわかっていない。確かなのは、アホウドリの主食はイカで、漁船の周りに群がって人間が海に捨てる魚くずをあさったり、餌のついた釣り針を誤飲したりする鳥も多いといったことだ。

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