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奇妙な恐竜たち

DECEMBER 2007

文=ピーター・グウィン イラスト=Renegade 9, Pixeldust Studios, and 422 South

奇妙な口は道具として完璧。だが、何をするものなのか?

  自然淘汰の流れに身をまかせ、高度に特殊化してしまった生き物は、わずかな環境の変化にも適応できず、絶滅するしかなかったのだろうか? ニジェールサウルスは体長が15メートルもあり、首の長い竜脚類の一種、ディプロドクスの遠い親戚と考えられている。掃除機の先端のような形の口、無数の小さな歯、太くて長い首、透けそうなほど薄い頭骨といった特徴から浮かぶのは、サーカスの見せ物のような奇抜な姿だ。これで何をどうやって食べ、生命を維持していたのだろうか? ナショナル ジオグラフィックの協会付き研究者である古生物学者ポール・セレノは、ニジェール北東部で出土したこの奇妙な恐竜の化石を、1990年代半ばに調査した。最大の特徴は、幅広で平べったい鼻だ。これなら鼻がつかえることなく、口を地面に密着させることができるだろう。「まるで芝刈り機のようだ」とセレノは説明する。

 「ニジェールサウルスの口は、食べ物をかむというより、はさみとるようにできていたのだろう」とセレノは考える。歯のすり減り具合を見ると、植木ばさみのような動きをしていたと推測されるからだ。ニジェールサウルスは、骨格の8割近くが復元されているので、生きていたときの姿を具体的に思いえがくことができる。サハラ砂漠の南端辺りで、川岸に生えたやわらかい草を口いっぱいに含み、細かい歯を精密機械のように動かして食べていたのだろう。長い首の利点を生かせば、あちこち動きまわらなくても、広い範囲の草を食べられたにちがいない。

 ニジェールサウルスは極端な例だが、似たような特徴は、何百万年という時間のなかで、他のディプロドクスの仲間にも現れている。彼らは主な大陸すべてに広く分布していた。セレノによれば、こうした食べかたはかなり早い時代にもっと原始的な形で登場していた。しかし、この食べかたが進化して精密かつ完璧な採食マシンになったせいで、この種の恐竜は絶滅に追いこまれたのかもしれない。

 進化生物学者のデビッド・ジャブロンスキーは、「特殊な変化は短期的には恩恵をもたらし、自然淘汰のなかで有利に働くが、長い目で見ると弱点にもなる」と説明する。ニジェールサウルスが特徴を発達させすぎたために自滅したのかどうかはわからない。だが、この巨大な草食恐竜は、その奇妙な姿で、いっときの繁栄を謳歌したことだろう。

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※本誌12月号の出版後、ニジェールサウルスの推定体長は、科学者たちによって15メートルから9メートルに修正された。



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