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特集

自然と共に生きる
ハンターたち

NOVEMBER 2007


 米国のニュース専門局CNNの創業者テッド・ターナーは狩猟愛好家で、個人では米国一の大地主としても知られている。アメリカバイソンの群れをかつての生息地によみがえらせようと、ターナーは奮闘してきた。そして今では、生物多様性を保ちつつ持続可能な牧畜、林業、漁業、狩猟を行う場として、米国内に所有する私有地約80万ヘクタールを管理している。

 ターナーは自分の土地で、ウズラ、バイソン、エルク、シチメンチョウなどの野生動物の狩猟を有料で許可している。「元気な動物は健全な土地に育ちます。必要なのは、きれいな水、身を隠せる場所、そして豊富な餌。土地の管理しだいでどこまでできるか、実証したいんです」

 保護の資金は、ハンターから得た収入でまかなう。ニューメキシコ州とコロラド州にまたがるターナー所有の私設公園では、大型の獲物を狙い、頭部などを戦利品として持ち帰る“トロフィー・ハンター”たちに、年間200頭のエルクの捕獲を有料で許可している。公園内に生息する約1万頭のうち2%が捕獲枠だ。1頭あたり1万ドルで年間200万ドルの収入になる。これを活用して24万ヘクタールの公園を自然な状態に保ち、柵や囲いをほとんど設置せずに、在来の動植物がよく育つように管理している。

 そんな大金は払えないというハンターにも、保護活動に貢献する道は開かれている。米国には、土地を所有して有料で狩猟を許可し、その収入を特定の生物種や生息環境の調査にあてているNPO(非営利組織)が多数ある。そうした団体がハンターから集める資金は年間2億8000万ドル。「今でも野生動物の姿が見られるのは、ハンターのおかげと言っても過言ではないでしょう。こうした活動に、私たちハンターは、自分の資金や時間を惜しみなく割いてきました。野生動物の将来を危惧しているのです」と、バージニア州ウィンチェスター在住の英語教師でハンターのジム・クレイは話す。

低下する狩猟のモラル

 私自身はもっぱら野鳥を追うハンターで、たまにシカを1頭射って食用に冷凍することはあっても、トロフィー・ハンターのように大きな獲物の角や頭を持ち帰って自慢しようとは思わない。彼らはエルクやオジロジカなど、仕留めた大物の写真を財布に入れて持ち歩き、左右の角の広がりや枝角の数など、獲物のみごとさについてあれこれ蘊蓄を語る。

 トロフィー・ハンターは獲物の美しさに魅了されて、その体の一部を手元におきたくなるのかもしれない。私も毎年、ライチョウやヤマシギの羽根を何本か、記念にとっておく。美しい羽根を眺めていると、狩りの記憶が鮮やかによみがえるからだ。ハンノキの梢でさえずっていた鳥が、突然翼をたたんで落下する。その瞬間、獲物をくわえて戻ってくるのは、狩りの忠実な相棒である猟犬バートだ。老犬になった今も、自分の務めをみごとに果たしてくれる。

 毎年秋になると、私とバートは車で北に向かう。もう10年以上になる恒例行事だ。猟犬として訓練されてきた13歳のバートは、狩りに出かけるのがわかると子犬のようにはしゃぐ。私たちは秋がめぐりくるたびに、荒れ果てた果樹園を横切り、サンザシの茂みを伐り開きながら進み、日暮れにはなじみの安宿に転がりこむ。

 バートがくわえてくる鳥を、私は感謝といささかの罪悪感を抱きながら受け取り、茶色い羽をそっとなでる。食事に十分な獲物があるときは、上等なワインを開けて狩りの恵みに感謝を捧げ、バートの労を大いにねぎらう。狩猟がすたれ、白い目で見られがちな昨今だからこそ、こうした風習を大切にすべきなのだ。

 もっとも、ハンターの中に不届き者がいるのも事実だ。私が暮らすバージニア州では、禁猟期でもお構いなしに夜間に車を走らせ、シカを照らし出して狙い撃つ者がいる。昨秋には自分の地所内で、雌の子ジカを見つけた。背骨を射たれて後ろ脚がマヒしていたが、意識はしっかりしていて、私の姿を見ると、逃げようと必死で前脚をばたつかせた。その姿が哀れで安楽死させた私は、せめてもの供養にと、続く数週間、シカの肉を食べ続けた。最近、近くのシェナンドア国立公園では、管理当局がアメリカクロクマの密猟グループを摘発したという。この一味は、クマの胆嚢を生薬としてアジア市場に売りさばいていた。

 他の地域でも、ハンターのルール違反は後を絶たない。餌でおびき寄せるなどの違法なやり方でカモ猟をしたり、狩猟枠や猟期の決まりを無視したり、人家の近くで発砲したり、私有地に立ち入って地主とトラブルを起こす者もいる。また、違法とまではいかないが、倫理的に問題のあるハンターもいる。死にかけた獲物が断末魔の苦しみにのたうち回っているのに、カメラの前で平然とポーズをとる者、食べる気もないのにむやみに動物を殺す者、獲物を生命のない“モノ”のように扱う者などだ。

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