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特集

シリーズ「宇宙」
ハッブルが拓いた時代

NOVEMBER 2007


 20世紀の宇宙物理学者ライマン・スピッツァーも、古い理論に挑み、知の共有を重んじた。スピッツァーが、巨大な望遠鏡を地球の軌道に打ち上げるという大胆な構想を提案したのは1946年のこと。ハッブル宇宙望遠鏡が打ち上げられる半世紀近く前で、マイクロプロセッサーや通信システム、スペースシャトルといった宇宙望遠鏡に必要な技術はどれもない時代だった。スピッツァーは、宇宙望遠鏡なら単に既存の理論を検証、進歩させるだけでなく、新しい理論を生みだすきっかけにもなると主張した。

 ただし、そのように壮大で巨額のコストを要するプロジェクトは、簡単に受け入れられるものではない。スピッツァーは、従来の地上観測の予算を横取りすることはないと、仲間の科学者たちを安心させつつ、何年もかけて粘り強く議会に交渉した。やがてスピッツァーは長年の努力を実らせ、ハッブル宇宙望遠鏡が打ち上げられるのをその目で見届ける。そして、ハッブルが観測したデータの研究に精を出していた1997年3月31日、82年の生涯に幕をおろした。

「巨大な宇宙望遠鏡が打ち上げられ、天文学に革命を起こす」というスピッツァーの夢は実現した。「宇宙望遠鏡は時間や空間の概念を書き換える」という彼のもう一つの予言も、やがては実証される。

ハッブルが見た宇宙の真実

 スピッツァーの予言が現実のものになる以前にも、ハッブル宇宙望遠鏡は、既存の説を打ち破る成果を上げてきた。

 1994年、分裂したシューメーカー・レビー第9彗星の断片が木星の大気上層に突入すると、ハッブル宇宙望遠鏡はその一連の衝突を観測した。世界中の核弾頭を合体させたよりも強力なその衝突は、あまりに衝撃的な光景だったため、政府はNASA(米航空宇宙局)に、地球に衝突する可能性がある小惑星をリストアップせよと指示したほどだ。

 また、天文学者たちはハッブルのデータを使って、驚くほど美しい惑星状星雲の画像をつくった。惑星状星雲は、死期にある不安定な恒星が外層を噴出してできるガス雲。こうした画像は、宇宙物理学の進歩に大きく貢献している。そのほかハッブル宇宙望遠鏡は、オリオン星雲など星が生まれる領域にある原始惑星系円盤も詳しく観測し、惑星が塵とガスの円盤から形成されるという理論を実証した。

 これまでに太陽系以外の恒星系で200以上の惑星が見つかっているが、いくつかはハッブルによって発見されたものだ。また、そのうち一つのスペクトルから、太陽系外の惑星の大気構成が初めて明らかになった。銀河の中心にブラックホールがあることや、そうしたブラックホールと「クエーサー」と呼ばれる非常に明るい天体が密接に関係していることもわかった。「ガンマ線バースト」という謎に満ちた高エネルギーの閃光が、宇宙全域から放たれていること、その一部は大質量の恒星が爆発した結果だということも、ハッブルのデータによって確認された。

 だが、とりわけ奇妙で予想もしなかった発見、つまりスピッツァーが予知したような「時空の概念を根本から修正する」ほどの発見は、彼の死から1年後に訪れた。

 天文学者の二つのチームがハッブル宇宙望遠鏡のデータを利用して、はるか彼方の銀河で起きた超新星爆発(恒星が最後に起こす爆発)を研究した。調査したのは特定のタイプの超新星。このタイプの超新星は絶対的な明るさがほぼ同じなので、見かけの明るさを比べれば、宇宙の膨張速度の変化を知る手がかりとなる。

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