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マラッカ海峡
の海賊たち

OCTOBER 2007



 そのうちに海賊として生計を立てる者が現れた。海賊たちは小回りのきく軽い舟で編隊を組み、舟を巧みに操って、この海峡を通る外国船を頻繁に襲っては、川の上流にある拠点の村に金品を持ち帰った。彼らは金や宝石、火薬、アヘンから奴隷にいたるまで略奪した。こうして、スマトラ島とマレー半島の沿岸の大部分で支配力を増してきたのだった。

 こうした歴史を受け継ぎ、21世紀になっても、海賊たちはマラッカ海峡で略奪をはたらいている。船に乗りこんで貨物を奪うギャング集団、船そのものを乗っ取る多国籍の犯罪組織、船員を誘拐して身代金を要求するゲリラグループ。現代の海賊は、大きくこの三つに分かれる。

 獲物には困らない。英国ロンドンの保険組合ロイズによれば、1年間にマラッカ海峡を通過する商船はおよそ7万隻にのぼり、世界の海上輸送物の5分の1、原油輸送量の3分の1がマラッカ海峡経由で運ばれるという。

 世界経済にとってこれほど重要な航路なのに、海峡の地理的条件がネックとなり、航行の安全を確保するのは不可能に近い。北端で約400キロある海峡の幅は、南端近くではわずか16キロ程度しかない。そんな狭い海峡一帯にはマングローブの茂る無人島が何百と点在し、海賊にとってまたとない隠れ家となっているのだ。さらに、海峡沿いのマレーシアとインドネシアの関係が良くないことも、警備をいっそう難しくする要因になっている。

 国際海事局(IMB)によると、2002年以降、マラッカ海峡と周辺海域では258件の海賊事件が発生し、200人以上の船員が人質になり、そのうち8人が殺されている。ロイズは2005年6月、マラッカ海峡を戦争・テロの危険海域に指定したが、近隣諸国のマレーシア、シンガポール、インドネシアがそれぞれの領海と沿岸部の警備を強化したため、2006年8月に指定は解除された。

 実際のところ、海賊事件の件数を正確に把握するのは不可能と言っていい。IMBの海賊行為報告センター長を務めるノエル・チューンによれば、海賊事件の約半数は報告されないという。「船主が、襲撃を報告しないよう船長に圧力をかけることもあります。悪い評判が立ったり、捜査で航行が遅れるのを嫌うためです」。このため、マラッカ海峡にどれくらいの海賊がいるのか、正確な数は誰にもわからない。

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