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特集

スプートニクから50年
宇宙開発 次の一手

OCTOBER 2007


 今年の6月に2機目の試作品を打ち上げたビゲローは、2010年に3人乗りのモジュールを軌道に乗せ、2012年までに宇宙飛行士の訓練プログラムを立ち上げる計画だ。彼は最終的に、この宇宙ステーションのモジュールを、ホテルや実験室、映画の撮影施設としてリースしたいと考えている。

 ロシアでは、国家が宇宙観光でひともうけをねらっている。2001年にはロシア連邦宇宙局「ロスコスモス」が観光プログラムを始動、米国人の億万長者デニス・チトーをソユーズに乗せて国際宇宙ステーションを訪問させた。ソフトウエア開発者のチャールズ・シモニーは、今年に入って2000万ドル以上の料金を支払い、通算5人目の宇宙観光客となっている。

21世紀の宇宙開発競争

 NASAのグリフィン長官は、太陽系の有人探査をなんとか推し進めようと、議会に足しげく出席し、その重要性を訴えてきた。そして、スペースシャトルを引退させ、オリオンを後継機とすることを議員に納得させた。さもないと、中国などの追い上げにあい、宇宙開発の最先端から引きずりおろされるというのだ。

 これまで中国のゴビ砂漠にある酒泉衛星発射センターを訪れた西洋人はごくわずかしかいない。だが写真を見る限り、そこはNASAのケネディ宇宙センターと驚くほどよく似ている。2003年10月15日には中国の宇宙飛行士、楊利偉が、酒泉から飛びたった宇宙船で地球の軌道を周回し、中国は有人宇宙飛行に成功した史上3番目の国となった。

 中国の軌道到達は、新たな宇宙開発競争の幕開けを告げているのだろうか。かつての米ソ間の競争で確立された技術を、中国は組織的に導入しつつある。2005年10月には二人の中国人宇宙飛行士が、同国で2度目の宇宙飛行を成功させた。3度目となる2008年には3人が搭乗する予定だ。中国有人宇宙飛行プロジェクト主任の唐賢明は、中国はいずれ自前の宇宙ステーションをもち、月へも探査の目を向けるつもりだと語る。

 グリフィンはライバル出現の可能性を大いに歓迎している。宇宙開発の黄金時代は米ソの競争によって加速した。再び同じことが起こるかもしれない。2006年の国際宇宙航空学会でグリフィンはこう問いかけた。「将来、月が人々の移住地になったとき、そこで話されているのは私たちの英語でしょうか。それとも、別の粘り強く大胆な文化が、私たち米国人の努力を追い越して、遠い未来の月社会に自らの足跡を記すのでしょうか」

 有人計画の費用対効果を問う声もある。アポロ計画のように、高価なわりに得られるものの少ない有人探査にかまけていては、無人ミッションの未来が閉ざされてしまうというのだ。無人探査機や宇宙望遠鏡は、大いなる発見や驚きをもたらしたばかりではない。地球の観測や気象予報、航法システム、電気通信など幅広い分野で、多大な貢献を果たしてきた。しかも宇宙で活躍するロボットは、宇宙服や放射能を避けるシールドがいらないし、トイレや打ち上げ時の脱出装置も必要としない。消耗品は、燃料さえ積んでおけばいいのだ。

 無人探査がいかに安上がりかは、議論の余地がない。NASAの土星探査機カッシーニには34億ドル(約3900億円)の費用がかかったものの、2004年から土星とその衛星を調査し続けており、あと10年は先駆的なデータをもたらしてくれそうだ。3億3300万ドル(約380億円)をかけた彗星探査機ディープ・インパクトは、投下物を放った後に新たな任務に向かっており、また別の彗星と出合うだろう。

 一方、スペースシャトルは2週間程度のフライトで、乗員1人当たりのコストが10億ドル。しかもこれはコロンビア号の事故以前の2002年の数字で、その後はさらに上昇している。

 NASAの予算が再び有人宇宙飛行に振り向けられた結果、宇宙科学や地球科学の分野で予定されていた予算増は抑えられた。年間約55億ドル(約6300億円)というNASAの研究予算は、事実上2011年まで凍結、その間、月から火星を目指す計画は、予算が2倍以上の87億ドル(約1兆円)になる。

 宇宙探査のロボットがあれだけ立派な仕事を、ずっと低コストでこなすというのに、なぜ有人宇宙飛行をする必要があるのか。「人間こそが、探査の成果を最大限に引き出せる」と、有人飛行の擁護者は主張する。だが、最も説得力のある有人飛行の意義は、50年前から変わっていないのかもしれない。宇宙探査とは、突きつめれば人類の夢なのだ。

「科学への貢献という見地からは、私は有人飛行を一切正当化できない。もちろん科学にも貢献するだろうが、それはオマケのようなもの」と、グリフィンは言う。「私たちの行動範囲、つまりは人類の運命を広げたいと願う衝動こそが、出かけるに足る十分な理由なのだ」

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