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特集

スプートニクから50年
宇宙開発 次の一手

OCTOBER 2007


有人飛行の新たな夢

 一方、有人宇宙探査は、今も人類の想像力をかきたててやまない。ただ今後、宇宙に対するその飽くなき思いが、50年前のスプートニクに匹敵するような壮大な冒険に結実するかどうかは、現時点ではわからない。

 火星への有人飛行は、月に代わって新風を巻き起こしたが、数年で計画全体がしぼむ危険性もある。東西の冷戦が終結した今、競争心をあおり立てるライバルはもはや存在しない。あわててロケットを打ち上げる必要はなく、予算も少なく先細りになるばかりだ。

 いくつかの報告によれば、ブッシュ大統領の計画の前段にある「月に人を送り、恒久的な基地を建設すること」だけなら、20年間で2170億ドル(約25兆円)という比較的お手頃なコストで実現できるという。

 月での生活を実現するには、アポロ計画からは想像もつかないほど高度な技術が必要だ。宇宙飛行士たちは、宇宙放射線に長時間さらされながら、115℃からマイナス150℃まで大きく変動する月面温度に耐える住居を造らなければならない。宇宙服は、月面を舞う微細なガラスや岩石からなるザラザラした粉塵に耐える必要がある。アポロの飛行士が着用した宇宙服は、わずか3日の月面活動のあいだに、この塵のせいで連結部がほとんど動かなくなった。新たな月面探査車には、この塵から酸素を抽出する機能が必要だろう。それによってロケット燃料や呼吸用の空気、飲料水、放射線よけのシールドをつくるのだ。火星への挑戦は、もうひと世代先の話になりそうだ。

 NASAはこの新たな宇宙計画を「コンステレーション計画」と名づけ、すでに新型宇宙船も発注している。この宇宙船「オリオン」は、NASAのグリフィン長官が「アポロの強化版」と形容した、1960年代を彷彿させるカプセル型。強力な固体燃料ロケット「アレスⅠ」で打ち上げられ、当初は乗員6人を国際宇宙ステーションに運び、やがては乗員4人を月へ送る計画だ。NASAはさらに大型の輸送ロケット「アレスⅤ」を建造する予定で、これを使えばブースター・ロケットや着陸船など、月の探査に必要な機材を軌道上に運び上げられる。

 NASAのコンステレーション計画で月を訪れるのは、早くて2018年ごろになるだろう。最初の数回は予備的な探査で、月の南極付近の基地建設予定地を調べる。続く長期のミッションで、基地を足場に宇宙飛行士が月面を探査し、同時に火星への有人飛行に向けた戦略や技術を開発していく。

 コンステレーション計画を指揮するグリフィン長官は、NASAや国防省、民間の航空産業などで経験を積んできたロケット科学者。彼はこの計画を推進するため、NASAが取り組むミッションの優先順位をごっそり入れ替えた。スペースシャトルについては「可能性を大いに前進させた」とたたえながらも、けっして推進しようとしない。現存するシャトル(ディスカバリー号とアトランティス号、エンデバー号)は、2010年末までに引退するだろう。すでに3分の2近くが完成した国際宇宙ステーションの資材を運び終われば、遠からず用済みだ。

 スペースシャトルの時代が終わったら、グリフィンはNASAに低軌道の計画から手を引かせ、月に専念させるつもりでいる。建造中の宇宙船オリオンを、地球と国際宇宙ステーションの間の往復に使うことはもちろん可能だ。しかし、グリフィンはその仕事を民間企業の平凡なロケットに任せたい考えだ。すでに、彼は新たなロケットの開発資金として、スペース・エクスプロレーション・テクノロジー社や、ロケットプレーン・キストラー社に5億ドルを支出している。

 民間企業が「既製品」のロケットや宇宙船を誰にでも売る日が来るなどとは、冷戦下の宇宙開発競争の時代にはとても考えられなかった。だが今や、一代で巨万の富をなしたような個人の投資家が、宇宙のノウハウをもつ技術者と手を組んで、民間のロケットや宇宙船開発に乗り出し、「新・宇宙産業」を立ち上げつつある。

 派手なもみあげがトレードマークのバート・ルータンは、宇宙船「スペースシップ・ワン」を設計・建造した航空宇宙技術者。彼はこの宇宙船で、2週間のうちに2度、宇宙への弾道飛行を成功させて、1000万ドルの賞金を手に入れた。この賞金は、低コストの宇宙飛行を発展させるために、非営利団体のXプライズ基金が提供したものだ。

 現在、ルータンは、英ヴァージン・グループ会長のリチャード・ブランソンと組んで、新たな宇宙船「スペースシップ・ツー」を開発中だ。この観光用宇宙船は、とりあえず1人20万ドル(約2500万円)で、6人の乗客に短い宇宙飛行を体験させることになっている。

 こうした新・宇宙産業にはロケットばかりでなく、発射台と目的地も必要だ。今年に入って米国ニューメキシコ州は新しい売上税を導入した。新たに見込まれる2億ドルの税収を、同州の砂漠につくる宇宙旅行基地「スペースポート・アメリカ」の建設費用に充てる計画だ。

 米国ラスベガスの郊外では、ホテル王のロバート・ビゲローが、膨張型の宇宙ステーションをつくっている。このステーションはモジュール構造になっていて、それぞれが丈夫な繊維と固い芯でできている。地上で見ると、閉じた傘のようなかっこうだが、宇宙に出ると開いて膨らみ、区画された居住空間となる。生命維持装置などの機材は、芯の部分に入っている。「ジェネシスⅠ」と名づけられたこの無人の小型ステーションは2006年7月に打ち上げられ、地球の上空557キロで花のように広がると、これまで故障なく作動し続けている。

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