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特集

シリーズ「地球の悲鳴」
バイオ燃料
実用案にもお国柄

OCTOBER 2007


 米国中西部のネブラスカ州では、州内で生産される作物の約3割をエタノール工場が消費するようになり、トウモロコシの価格は2倍にはね上がった。栽培農家はここ数十年で最高の収益を見込んでいる。農場を営むロジャー・ハーダーズは「今年は豆を植えずに、畑全面にトウモロコシを植えました。うちの牛にやるトウモロコシも売りたいくらいです」と話す。

 これだけブームになってはいるが、米国ではエタノールだけで車を走らせるのは難しく、おもにガソリンの添加剤として使用されている。ただし、中西部のトウモロコシ生産地帯では、約1200カ所の燃料補給スタンドで、E85(エタノール85%とガソリン15%)と呼ばれる混合燃料を販売している。E85は特殊な設計のエンジンでしか使えない。エタノールは燃費がガソリンに比べ30%程度劣るが、中西部では1ガロン(約3.8リットル)当たり2.8ドルで、1ガロン3.2ドルのガソリンに対抗できる。

 ネブラスカ州西部の農場出身のクリスティーン・ウィーツキーは、現在、人口約560人の小さな町ミードにある、米国最先端のエタノール工場の一つで技術部長を務めている。

 エタノールの製造工程は、酒類の蒸留とほぼ同じだ。穀物を発酵させてアルコールにする技術は、はるか昔から知られてきた。まずトウモロコシの実の粉末に水を混ぜて加熱し、でんぷんを作る。このでんぷんに酵素を加えて糖に転換する。できた糖を酵母で発酵させると、アルコールになる。それを蒸留して純度を上げる。残った酒かすは家畜の餌になる。蒸留工程で出る排水は窒素を多く含むので、一部を肥料として畑にまく。

 この工程では、CO2が大量に排出される。エタノールが環境に優しいという説が疑わしくなるのは、このあたりからだ。発酵過程での酵母のCO2排出に加え、大半のエタノール工場では天然ガスや石炭を燃やして蒸留のための熱を得ていて、このプロセスでもCO2が発生する。トウモロコシの栽培にも、天然ガス由来の窒素肥料が使われ、ディーゼル燃料で動く農機がさかんに使われている。

 トウモロコシ由来のエタノールのエネルギー収支(燃料生産に投入されるエネルギーと、その燃料から得られるエネルギーの比)を調べた研究結果によると、製造に必要な化石燃料のほうがエタノールで代替できる化石燃料よりも多く、収支は赤字になるか、わずかにプラスになる程度だという。算出方法により多少の差はあれ、トウモロコシ由来のエタノールが地球温暖化の解決策でないのは確かだ。

 「バイオ燃料は弊害を生むだけです。本当は省エネに取り組むべきなのに」と、エタノール批判の急先鋒、米国コーネル大学のデビッド・ピメンテルは主張する。「エタノール事業は、政府が国民の目をごまかすために行う無駄な事業だと、多くの人が嘆いています」

 だが、ウィーツキーをはじめミードの工場の技術者たちは、自己完結型のシステムを導入すれば、エネルギー収支を改善し、温暖化ガスの排出を削減できると考えている。工場の隣の牧場から肉牛の糞を回収して1万5000キロリットルの巨大な2台の処理装置にかけ、メタンガスを取り出して蒸留ボイラーの燃料にする。つまりバイオガスを使ったバイオ燃料の生産というわけだ。効率アップは環境に良いし、工場の増益にもつながると、ウィーツキーは言う。

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