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特集

闇夜に君臨する翼
パナマのコウモリ

AUGUST 2007

文=ジェニファー・S・ホーランド 写真=クリスチャン・ツィーグラー

米パナマのバロ・コロラド島。面積が淡路島の40分の1ほどの小さな島で、74種ものコウモリが独自に進化した。その適応力の秘密を探る。

 6000万年前、地球上で哺乳類が全盛を迎えたころ、樹上に暮らす動物の中に、紙のように薄い翼をつけたものがいた。やがて、超音波で物体の位置を知るすべを身につけ、暗闇でも自在に飛べるようになった。これが闇夜を制したコウモリの始まりだ。

 コウモリは世界中で1100種以上にまで増えたが、今でもほかの哺乳類とは一味違った生き方をつらぬき、また同じコウモリでも習性が種によって異なる。このようなコウモリの暮らしぶりを観察できるのが、パナマ運河のバロ・コロラド島。少なくとも74種のコウモリがその熱帯雨林に生息しているのだが、1500ヘクタール(淡路島の40分の1ほど)の小さな島で、無数のコウモリが互いの生活をじゃますることなく平和に暮らしているのは、何とも不思議だ。

 コウモリはどのようにして、種を絶滅させかねない激しい生存競争を防いでいるのだろうか? その秘密はコウモリたちの餌やねぐら、超音波の使い方の違いにある。たとえば餌一つとってみても、空中で昆虫を捕まえて食べるコウモリがいるかと思えば、夜に咲く花の蜜や花粉をなめるコウモリもいる。

 超音波の使い方もさまざまだ。コウモリは超音波を発し、はね返ってきた音を耳でとらえて障害物や獲物のありかを知るが、森の地面にとまっている虫を探し出すコウモリは、持続時間の短い超音波を繰り返し出す。逆に、飛んでいる虫を探すコウモリは、木々の梢よりも高い場所で長い超音波を発する。

 習性の違いは、体の特徴にも表れている。たとえば、魚を捕まえて食べるウオクイコウモリの爪は短剣のように鋭く、ほおは魚を運べるように袋状になっている。一方、花の蜜と花粉を餌にするコウモリの中には、硬い毛のついた舌と溝のあるあごをもつものがいる。

 翼の形状も、ふだん飛ぶ場所によって違う。空高く飛ぶコウモリは翼が長くて細く、木の間をすり抜けて低く飛ぶコウモリは翼が短くて幅広い。耳や目、歯、鼻の形も千差万別だ。それぞれの種が独自の進化を遂げ、島に適応してきた。

 島の熱帯雨林とそこにすむ多様な生物は、持ちつ持たれつの関係にある。種子や花粉を運ぶコウモリは植物の繁栄を助け、虫を食べるコウモリは害虫の数を抑える働きをする。コウモリ自身も、サルやフクロウ、ハヤブサ、ほかのコウモリ、大型のクモなど、森にすむ動物の餌になる。お互いが自分の役割を果たしているからこそ、多様な生き物が長く暮らしていける、健全な生態系を維持できるのだ。


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