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群れのセオリー

JULY 2007


 ミツバチのルールで動く集団は、ほぼ例外なく賢明な決定を下すことができる。そう語るのは、『群集の叡知』(邦訳題『「みんなの意見」は案外正しい』)を書いたジェームズ・スロウィッキーだ。株の投資家、グループで研究する科学者、ガラス瓶に入った豆の数当てクイズに参加する子どもたち――どんな集団でも、構成員が多様で、それぞれが自立して考え、投票やオークション、あるいは平均をとるといった方法を採用すれば、賢い判断が下せるというのだ。

 競馬を例に見てみよう。なぜ人々は、レース結果をあれほど正確に予測できるのだろう? 各馬がいっせいにスタートしたとき、そのレースの結末は、オッズ掲示板を見ればだいたいわかる。オッズが低い馬から順にゴールしていくことが多いはずだ。スロウィッキーによると、競馬の投票ほど「集団の叡知」を最大限に引きだせるシステムはないという。

「競馬場には、実に多様な集団がいます。1日中競馬新聞とにらめっこしている人たちもいれば、聞きかじった程度の人たちもいる。黒い馬が好きだから賭けるという女性のように、場当たり的に決める人もいます」とスロウィッキー。そこではあらゆる情報が集まり、意見がぶつかりあう。そこから集団としての判断が生まれ、人々はそれにしたがって馬券を買う。それだけに、大穴を当ててひとり勝ちする幸運はめったにないということだ。

 米国ワシントンD.C.の小さな公園でも、ハトが群れの知能を披露してくれる。ハトたちは公園の木々や車の上をしばらく飛びまわると、周囲の建物のひさしで休む。かと思うと、何かをきっかけに、いっせいに飛びたつ。

 ハトの群れに、次の行動を指示するリーダーはいない。そのかわり、どのハトもすぐ隣のハトの動向にたえず注意を払っている。それぞれは単純なルールに従って行動しているのだ。こうしたルールの集まりもまた、群知能といえる。ただこちらは意思決定というより、動きの協調性に重点が置かれている。

 コンピューター・グラフィックスを研究しているクレイグ・レイノルズは、鳥の動きを支配するルールに興味を持ち、1986年に「ボイド」というプログラムを作った。これは群れを動かすプログラムだが、そのルールはたった三つしかない。

1)近づきすぎない
2)進む方向をだいたい揃える
3)離れすぎない

 実際にプログラムを動かすと、本物の鳥の群れそっくりの、予測のつかない行動をする。

 レイノルズがプログラム「ボイド」を開発したのは、テレビ番組や映画に出てくるアニメーションの動物を、何とかして本物らしく見せたいと思ったからだった(ボイドのアプローチを採用した最初の映画は、1992年に公開された『バットマン リターンズ』で、コウモリの群れとペンギン軍団の動きに使われた)。

 自己組織モデルを利用して群れの動きをみごとに再現したレイノルズは、ロボット工学の分野にも大きく貢献している。鳥の群れのように協調して動けるロボットの集団は、単体のロボットよりもはるかに優秀なのだ。

 たとえば、そうしたロボット集団を広大な地域に分散して配置すれば、全体で一つの移動センサーとして機能し、地域内の情報を効率よく集めることができる。予測外の事態に直面したときも、アリが試行錯誤を繰り返しながらいろいろな選択肢を見つけていくように、集団として適応し、すばやく反応できるだろう。たとえそのうちの一つが壊れたとしても、別のロボットがすぐに代わりを務めればよい。何より、集団のコントロールが分散化され、リーダーに頼る必要がなくなるのが最大の利点だ。

 マルコ・ドリゴのグループは、互いに補完的な能力を持ち、協調できるロボット集団「スウォーマノイド」の研究で、欧州のトップを走る。たとえば「フットボット」と呼ばれるロボットは、地上輸送を担当する。「ハンドボット」は壁を登ったり、何かを操作するのに適している。「アイボット」は空を飛んで、ほかのロボットに情報を伝える。

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