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ニュージーランド
復活した豊かな海

APRIL 2007



 ニュージーランドは、1971年に保護区を設置するための法律を制定。特別な地域だけでなく、ありふれた場所も保護することが国益につながると宣言した。“水半球”とも呼ばれる南半球にあるニュージーランドは、米国よりも海岸線が長く、世界で4番目に広い排他的経済水域をもつ、世界有数の海洋国家であることがその理由だ。

 では、ゴート島の成功を受けて、ほかの地域でも海洋保護区が続々と増えたのだろうか? 結論からいえば、そうはならなかった。

 ゴート島に続いて、同国のノースランドの海岸から22キロ沖合にあるプアナイツ諸島でも保護区の申請が出されたが、実現しなかった。プアナイツ諸島は亜熱帯にある世界でも指折りのダイビングスポットの一つで、太古の火山が名残をとどめていて、サンゴ礁が広がっている。温暖な水域と亜熱帯水域の境界に位置し、島の北西数百キロに端を発する暖流が近くを流れ、水温は沿岸部より0.5℃ほど高い。熱帯の海からは、海流に乗って小エビからジンベエザメまで多数の海洋生物がやってくる。海洋生物がいるだけでなく、数百万年にわたる風化作用がつくり出したアーチやトンネル、洞窟が島のいたるところにあり、ダイバーたちに人気だ。

 プアナイツ諸島は保護区の候補地に適していると思われた。しかし、本来プアナイツ諸島のような生物の生息環境を保護するためにつくられたはずの法律が改正され、保護範囲が狭められてしまったのである。一般の釣り人たちの声に屈したのだ。プアナイツ諸島は釣り人に人気が高く、こうした素晴らしい漁場を立ち入り禁止にすることに激しい反対運動が起きた。その結果、商業漁業は禁止するが、人気の高い魚種を対象とした趣味の釣りは許可するという、バランタインに言わせれば、とんでもない妥協案が生まれたのだ。

 バランタインにとって、この事態は自然保護の本来の目的から大きく逸脱した茶番劇に映った。ごくありきたりのゴート島を保護対象として認めた法令が、環境保護の象徴的な存在となるはずのプアナイツ諸島を保護しなかったからだ。その後、激しい議論の末、商業以外の目的で行われる釣りに関する規定が削られた。危機に瀕したプアナイツ諸島が全面的に保護されるようになったのは、1998年のことだった。

 とは言うものの、趣味で行う小規模の釣りが海洋生態系にどの程度のダメージを及ぼすのかは、よくわかっていなかった。魚の数が次第に減少し、姿を見かけなくなる魚種が出て、ようやく事の重大さが明らかになるからだ。

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