/2007年4月号

トップ > マガジン > 2007年4月号 > 特集:ニュージーランド 復活した豊かな海


定期購読

翻訳講座

ナショジオクイズ

キリン科の動物は次のうちどれ?

  • シマウマ
  • オカピ
  • トムソンガゼル

答えを見る

ナショジオとつながる



特集

ニュージーランド
復活した豊かな海

APRIL 2007



生態系の崩壊が保護を後押し

 バランタインが漁業関係者を研究所に招き、漁業を禁止して海洋保護区をつくってはどうかと提案したのは1965年のことだった。「半数程度の住民は問題ないという意見だったが、残りの人たちからは、そんなことをしたら命がないぞと言われた。冗談交じりだったけどね」と、バランタインは当時を思い出す。

 彼らの考えを変えたのは、誰もが驚くような変化が海底で起きたためだった。マオリ語でキナと呼ばれるウニが海藻を食べ尽くしてしまい、ゴート島の湾が広範囲にわたって荒れ果ててしまったことに、海洋研究所のダイバーが気付いたのだ。天敵のフエダイやロブスターなどの捕食生物が乱獲されて数を減らしたため、キナが爆発的に増えたことが原因だった。

 漁が禁止されると、状況はすぐに好転し始めた。キナは急激に減少し、海藻も元通りに戻った。警戒心が強いため、あまり姿を見せなかったフエダイも数が増え、よく見かけるようになった。

 理由はまだ十分に解明されていないが、ある海域を禁漁にすると、フエダイがその海域内に集まり、大きな集団を形成する。ロブスターも同様だ。今では保護区内のロブスターの生息密度は、保護区外の15倍にもなるほどだ。 

 ロブスター漁師は、保護区を上手に利用して利益を得るようになった。保護区内のロブスターが増えると、保護区外へ移動していく「あふれ出し」と呼ばれる現象が起きて、境界線のすぐ外側に設置したカゴで簡単に捕まえられるようになる。当初は保護区の設置に懐疑的だった漁師たちも、こうした変化を目の当たりにして、熱心な擁護派に転じた。

 保護区で育った魚や、おびただしい数の卵や幼生が保護区外へ流出していくことが、ニュージーランドでは海洋環境の保護政策を推進していくうえでの大きな説得材料となっている。ゴート島での研究は、保護区で海洋生物が増えると、他の海域でも生物の数が増える効果があることをはっきりと裏付けた。

 こうした研究が可能となったのは、この保護区では30年間にわたって漁業が禁止され、生態系が保護されてきたからだ。

 ゴート島が画期的なのは、世界で最初にできた禁漁保護区の一つであると同時に、ごく普通の沿岸海域を保護した点にある。

Back2/7 pagesNext


ナショナル ジオグラフィック バックナンバー