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マグロをつくる
日本の漁業

APRIL 2007

文=芳尾 太郎(日本版編集部) 写真=的野弘路

ジラと同じように、クロマグロも日本人の口に入らなくなるのか?日本では、卵から育てる「完全養殖」への期待が高まってきた。実験の成功から5年、実用化に向けて技術開発が進んでいる。

 静岡県の清水にある東海大学海洋学部のキャンパスの奥に、2006年夏、大きな白いテントが出現した。窓はなく、完全に遮光されたシートが全体を覆っている。

 テント内には、薄明かりのなかに直径5メートルの円形の水槽が四つ設置されている。そこでは地下23メートルからくみ上げられた海水が円を描いて流れ、体長50センチほどの魚が数匹、流れに逆らうように泳いでいる。“海のダイヤ”とも呼ばれるクロマグロの幼魚だ。

 東海大と民間企業のWHAは、このテントでクロマグロの陸上養殖に取り組んでいる。異様に映る実験施設は、マグロが居心地よく暮らせるようにと配慮して設計されたものだ。遮光されているのは、マグロが急激な明るさの変化によってパニックを起こさないように、地下海水は病原菌を持ち込まないように、水流は魚たちが壁に衝突しにくいようにするための工夫だ。

 「海での養殖は、天候などの影響を受けやすい。陸上なら水温や餌を適切に管理できるので、安定して育てられるはず」と、東海大学水産学科教授の秋山信彦さんは言う。現時点では、設備投資などを含め、50センチほどに育つまでにかかる費用は1匹当たり100万円。マグロを安定供給できるようになるには、まだまだ時間もコストもかかりそうだ。

 ゆくゆくは40×50メートルの大型水槽も建設し、体長2メートルほどにまで育てて繁殖させたいという。「自分たちの食べるものは、外国からとやかく言われずに食べたいですから」。実験に踏みきった思いを、発案者であるWHAの山本明人さんはこう語る。

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