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特集

マグロをつくる
日本の漁業

APRIL 2007



 水産庁によると、日本で1年間に消費されるクロマグロはおよそ4.4万トン。世界自然保護基金(WWF)の試算によると、世界のクロマグロ漁獲量の約80%を消費しているという。日本がクロマグロの最大の消費国であることは紛れもない事実。地中海などの生息数を回復させるには、漁獲量を50%以上減らさなければならないとの調査もある。マグロの漁獲削減は、待ったなしの課題といえる。

 とはいえ、日本におけるクロマグロの需要は根強い。海の生態系を守りつつ、マグロをこれからも食べていくためには、東海大やWHAが目指しているような、マグロを卵から成魚まで育てる、「完全養殖」を確立するしかない。

日本は完全養殖の先進国

 そもそも完全養殖は、日本が誇る技術だ。現在、マダイやヒラメ、トラフグなど、国内で養殖されている海水魚の多くは、ほぼ100%完全養殖で生産している。当初はどの魚も、海から稚魚を捕ってきて育てていたが、1960年代に繁殖・ふ化の研究が進み、80年代には稚魚まで育てる「種苗生産工場」が日本各地に建てられた。そして今や、マダイであれば、天然ものの漁獲量が年間1.5万トンであるのに対し、養殖生産量は7.7万トンと、供給量全体の80%以上を占めている。高級魚の代名詞だったマダイは、こうして身近な食材になった。

 クロマグロも完全養殖が軌道に乗れば、保護と両立できるはずだ。技術開発も進んでいる。2002年に近畿大学の水産研究所が、世界で初めてクロマグロの完全養殖に成功し、販売会社を設立して出荷も始めている。

 東京・日本橋の百貨店、三越。地下にある鮮魚売り場では、毎週、近大から仕入れたクロマグロを店頭で解体し、「近大産」のシールを張って販売している。ほかの養殖ものに比べるとやや割高だが、天然ものに比べれば安い。「毎週買いに来てくださる方もいれば、次はいつ入荷するのという電話がかかってきたりもします」と、店舗を運営する吉川水産の横山貴之さんは言う。

 好評とはいえ、近大から出荷されるクロマグロは1週間に20匹ほど。私たちが日ごろ口にする養殖マグロは、天然ものをいけすで太らせた「蓄養」ものばかりなのが現状だ。近大の偉業達成から5年。クロマグロの完全養殖はどれほど実用に近づいているのだろうか。

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