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特集

シリーズ地球の悲鳴
魚が消えた海

APRIL 2007



 これからガラスとダイバーたちは、数時間かけてマグロを網から曳航用のいけすに移す。捕まえたクロマグロは全部で163匹、体重は平均130キロほどだ。いけすは直径が50メートルもある巨大なもので、プラスチック製の頑丈なフレームが水中の重たい網を支えている。中では、前日までに捕獲されたクロマグロが1000匹ほどひしめき合っていた。漁船の脇にいけすが到着したところで、ガラスは海に入るように私をうながした。

 マグロと一緒に泳ぐなんて、めったにできない経験なのだろうが、何とも落ちつかない気持ちになった。「クロマグロは、スピードも威力もミサイルそっくりだ」とガラスは表現したが、まさにその通りだ。戦艦を思わせる青みがかった灰色の胴体から、黄色い小さな背びれが生えている。横腹は使いこまれた鋼のような質感で、そこに稲妻のような青い線が入っていることもある。大きいものは、体重200キロ以上、体長2.5メートルはあるだろう。

 「ガラスとダイバーたちは、いけすのゲートを開いて、クロマグロの追いこみを開始した。旋回する群れから離れたマグロが、魚雷のようにまっすぐいけすに飛びこんでいく。

 地中海および大西洋東部で認められているクロマグロの年間漁獲割り当ては3万2000トン。今日のエコロフィッシュ社の水揚げもその一部だ。だが実際には、5万~6万トンのマグロが捕獲されているらしい。マグロ資源の管理を行っている大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)も、商業漁船団がこの割り当てを有名無実にしていることを認めている。

 この乱獲の勢いが今後も続くと、マグロ資源の枯渇は避けられないと、ICCAT所属の専門家は強く警告する。クロマグロは大西洋を回遊することもあるため、米国の専門家や、少ない割り当て量に甘んじてきた国の漁民たちは、以前から地中海の漁獲割り当てを大幅に削減するよう要求している。にもかかわらず、2006年11月の会合で、ICCATは漁獲割り当てを大きく減らすことはしなかった。加盟43カ国のうち、漁獲量の大幅削減を主張したのは米国やカナダなど、ひと握りの国だけだったからだ。

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