/2007年4月号

トップ > マガジン > 2007年4月号 > 特集:地球の悲鳴 魚が消えた海


定期購読

日経ナショナル ジオグラフィック 翻訳講座 秋期受講生募集中 詳しくはこちら

ナショジオクイズ

Q:チーターの違法取引が横行しているアフリカ東部のソマリランド。ソマリアからの分離独立を一方的に宣言しているこの共和国が位置する半島一帯は何とよばれているでしょう?

  • アフリカの角
  • アフリカの耳
  • アフリカの鼻

答えを見る

ナショジオとつながる



特集

シリーズ地球の悲鳴
魚が消えた海

APRIL 2007



マグロをねらうハイテク船団

 地中海のクロマグロは繁殖行動があだとなって、漁船団の餌食になっている。春から夏にかけて水温が上昇すると、クロマグロの群れは産卵のため海面近くに集まってくる。雌のマグロが水面に銀色の腹を見せながらのたうちまわり、無数の卵を産みおとすと、雄が精子をかけていく。波のない日でも海面は激しく波だち、放出された卵と精子で水の色まで変わるほどだ。子孫を残すためのこの営みを、上空の飛行機が見つけて、漁船団に知らせる漁法が盛んに行われるようになったのである。

 7月の暑い朝。スペインはイビサ島の西の沖合で、6隻のまき網漁船がクロマグロの群れを探していた。まき網漁は別名きんちゃく網漁とも呼ばれ、魚群を網で囲い、底の部分を絞って追いこんでいく。これらの漁船は、三つの競合する水産会社に所属していて、サファイア色の海の上を、3機の飛行機が縦横に飛びまわり、飢えたハゲタカのように魚影を探す。

 この漁を指揮するのは、バスク人のシエマ・ガラス・ウガルデだ。海洋生物学者でダイバーでもある彼は、エコロフィッシュ社というマグロ養殖会社の経営にもかかわっている。今、地中海沿岸には、こうした会社が69社もある。エコロフィッシュ社はまき網漁船を5隻しか持たないが、ライバルのリカルド・フエンテス・アンド・サンズ社は大規模だ。地中海のマグロ王、フランシスコ・フエンテスが経営するこの会社は、クロマグロから利益をごっそり吸いあげている。

 私はガラスとともに、全長22メートルのサポート船「ラ・ビベタ・セグンダ」号に乗りこんだ。漁船にはこのほか、ダイバーを乗せた船やいけすを曳航する船が同行する。午前11時、上空の飛行機から魚群発見の連絡が入ると、漁船は19ノット(時速約35キロ)にスピードを上げた。この賭けに勝つと、実入りは大きい。200匹程度の小さな群れでも、太らせて出荷すれば日本の市場で5000万円以上になる。群れのいるところに真っ先に着いたのは、エコロフィッシュ社の漁船だった。さっそく、長さ1~2キロにおよぶまき網が群れを囲いこむ。その様子を、ガラスは双眼鏡でじっと見守っている。

 「よし、網をしかけたぞ!」双眼鏡をのぞきながら、ガラスは叫んだ。しかし、見つけた魚群をひとり占めというわけにはいかない。エコロフィッシュ社の漁船が群れを完全に囲う前に、フエンテス社の漁船も到着し、網を繰りだす漁船のすぐ近くで停止した。こうすれば、タッチの差で遅れた漁船でも、水揚げを山分けしてもらえるルールになっているのだ。やりたい放題の地中海のクロマグロ漁にも、それなりのルールはある。

Back3/8 pagesNext


ナショナル ジオグラフィック バックナンバー