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特集

シリーズ地球の悲鳴
魚が消えた海

APRIL 2007



海の魚を奪い合う

 今や世界の海に、かつての面影はない。水産資源がどれほど減ったかに関しては、専門家の意見はまちまちで、外洋の大型魚類は80~90%減少したという意見もあれば、それほどではないと主張する海洋生物学者もいる。ただ、世界各地であまりに多くの漁船が、限られた数の魚を奪い合っている状況がいつまでも続かないことは、誰の目にも明らかだ。

 北大西洋の北海から北米ニューイングランド沖にかけての海域では、タラなどの大衆魚が激減している(特集「大漁の夢、今は遠く」を参照)。地中海では、12種ものサメが急激に減ったために、漁業が成り立たなくなっているし、電柱ほどの太さに成長するはずのメカジキも、野球のバットほどの若魚のうちに捕獲され、食用にされてしまう。

 北半球の多くの海域で魚がとりつくされた現在、漁船団は南を目指し、豊かな漁場を荒らしている。たとえば、アフリカ西岸沖の大陸棚では、地元ばかりか外国の商業漁船さえも野放し状態で操業しており、セネガルやギニア、ガーナ、アンゴラといった沿岸国の貴重なタンパク源を奪っている。アジアでも同様で、タイやインドネシアの海では漁船があまりに増えすぎたために、資源が底をつきそうだ。「今、海が直面している問題のなかで、最も深刻なのが漁業です」と、米ピュー慈善財団のジョシュア・S・ライカートは語る。

 昔ながらの漁業を「あこぎな商売」と決めつけるのは酷だし、漁業に従事する人すべてがあくどいことをしているわけでもない。だが、フカヒレ目当てに年間何千万匹ものサメをとりまくり、生きたままヒレだけを切りとって残りを海に捨てるようなやり方はどうだろう? とりたい魚に混じって網に入ってきた魚、つまり混獲された魚介類はそのまま放置され、結局は捨てられることが多い。はえ縄漁では、何キロにもわたって延びたはえ縄の針にかかり、ウミガメやアホウドリが溺れ死んでいる。

 自分たちの知らない遠い海のことだからといって、生命が失われていくのを見過ごしてよいものだろうか? もしクロマグロが地上の野生動物だったなら、その大きさ、速さ、移動の壮大さは称賛の的となり、その姿をひと目見ようと多くの観光客が押しよせるだろう。百獣の王ライオンにも匹敵する威厳の持ち主なのに、クロマグロは海にいるというだけで、多くの国ではその価値を知られていない。

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