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特集

恒星の最期
大爆発の謎を解く

MARCH 2007



 2004年に打ち上げられたスウィフトは、ガンマ線バーストの探索が目的の衛星である。ガンマ線を検知すると、搭載した望遠鏡をその方角に向け、バーストの残光を観測する。残光からバーストの発生位置を突き止められるからだ。情報は地上に送られ、大型の望遠鏡も発生領域を詳しく観測することになっている。

 2006年2月18日の早朝、スウィフトはおひつじ座の方角から放射されたガンマ線を検知、3分以内に発生位置を突き止め、地上に送信した。2日後には、このバーストが私たちのいる銀河系に近い小銀河で起きたと、米国アリゾナ州にある天文台の観測チームが発表した。通常のガンマ線バーストの発生源に比べれば、目と鼻の先といえる距離である。

 ガンマ線バーストは恒星の死の前触れだろうと考えていた天文学者たちは、2月18日のバーストがこの推論の検証に役立つと期待した。ガンマ線バーストの多くは数秒しか続かないが、このバーストでは、30分以上もガンマ線とX線が観測され、その後に可視光と赤外線がとらえられた。3日ほどでこの残光は薄れていき、超新星の出番がやってきた。

 ガンマ線バーストの残光が消えかけたころ、その領域が再び明るく輝く様子が、南米チリ北部の欧州南天天文台にある超大型望遠鏡(VLT)で観測されたのだ。恒星はガンマ線バーストが起きるのとほぼ同時に爆発したが、そのエネルギーの大半は目に見えない紫外線とX線として放出された。その後、ゆっくりと可視光が強まり、バーストの残光をしのぐ明るさで輝きだした。ガンマ線バーストから超新星爆発へと転じていく様子を、最初から順を追って観測により確認できたのは、これが初めてだった。

 この恒星が破滅の道をたどり始めたのは、超新星として観測されるよりもずっと前、重力との闘いに破れ始めた時からである。恒星は生まれた時から、自己の重力と闘う運命にある。生まれたての星の“原子炉”に点火するのも重力だ。星の中心部では、重力によって水素原子が押しつぶされ、温度が上昇して核融合反応が始まり、ヘリウムが生成される。こうして星は、光と熱を放つことになる。

 恒星の外側のガス層は非常に重いが、中心部では核融合によって膨張しようとする圧力が生じるため、押しつぶされずにすむ。だが水素が燃え尽きると、中心部は重力に負けて収縮していく。そして中心部が1億ケルビン(K、絶対温度)もの高温に達すると、今度はヘリウム原子が炭素原子に変わる核融合反応が始まり、その膨張圧で中心部の収縮は食い止められる。

 太陽と同じか、それより軽い、伴星をもたない恒星の場合、この後あまりドラマチックな展開はない。ヘリウムを燃やし尽くすと、あとはただつぶれて地球と同じくらいの大きさの白色矮星となり、ゆっくりと時間をかけて冷えていくだけだ。ただし、近くに伴星があり、その外側のガス層から水素を奪える場合は、別のシナリオがある。伴星のガスが白色矮星に引き寄せられ、十分に燃料がたまると、星の中心に火がつく。その炎は爆発的に広がり、白色矮星全体が吹き飛んでしまう。このいわば巨大な核爆弾が、Ⅰaタイプの超新星だ。

 ところが、2006年2月18日に観測された超新星爆発はこれとは違うタイプだった。核爆発を起こしたのではなく、重力に耐えきれなくなる重力崩壊によって超新星爆発が起きたのだ。ガンマ線バーストが見られるのは、このタイプの爆発の時だけで、質量が太陽の8倍以上ある恒星はこのプロセスをたどって死を迎える。

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