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日本鍛冶紀行

FEBRUARY 2007

本鍛冶紀行
「ものづくり」の原点、鍛冶のいとなみを訪ねて」

 薄暗い鍛冶小屋の片隅、火床(ほど)と呼ばれる炉にあかあかと火がおこる。赤く熱した鉄を炉から取り出し、火花や水蒸気を飛び散らせながら、ハンマーで的確な打撃を与えると、再び炉に戻す。単調とも見える一連の作業の繰り返しが、次第に鉄の塊を、機能美あふれる個性豊かな「道具」へと変えていく。
 自分たちは「鉄の産婆」だ、と言った鍛冶屋がいる。静と動が共存する彼らの仕事場には確かに、ものが生み出される現場の神秘的な雰囲気が漂っている。

 鍛冶屋の作る道具は、基本的にオーダーメイドだ。鉈(なた)1丁、鍬(くわ)1丁を作るにも、土地ごとの土質や植生、さらに注文主の体格や手の大きさ、腕っぷしの強さまでも見定める職人の仕事がものを言う。日々の営みを支える道具に対して使い手からの注文は細かく厳しいが、いったん意にかなった道具は繰り返し研がれ、鋼が減れば鍛冶屋に持ち込まれて「先がけ」と呼ばれる補修や修理を重ねて、長い間、大切に使われてきた。
 その手間からみればごく慎ましい代価で道具を作り、これまた廉価でアフターケアも請け負う鍛冶屋の仕事は、せちがらい現代社会では極めて成立しにくい業務形態と言わざるを得ない。一つの道具をこだわりをもって使い続ける人も、今ではすっかり減ってしまった。こうした逆風の中、かろうじて残った平成の鍛冶屋の多くは高齢で、後継者のあてもない。

 ライター・かくまつとむと写真家・大橋弘は、鍛冶屋という職人衆や彼らが作る鉄の道具に魅了され、10年以上かけて、全国各地の鉄の匠を訪ね歩いた。そのうち若い後継者のいた家は1割程度、およそ8割が20年内外で看板をおろすだろう、という厳しい状況だ。しかし、各地で出会った鍛冶の匠たちが、来る日も来る日も鎚(つち)を振るう地味な仕事に確かな手ごたえを感じてきたことは、その真摯な表情が何よりも雄弁に伝えている。多彩な鉄の製品は、彼らの誇りのよりどころであり、地域の文化の象徴でもある。鉄という素材を巧みに操り、使い手一人ひとりに合った道具を作り出す匠たち。その姿は、ものづくりの原点とは何かを問いかけてくる。
 鉄の匠を訪ねた10年の集大成『日本鍛冶紀行』の掲載写真から、何点かを紹介しよう。

 鉄の塊を鋭利な刃物や力強い農具・工具に変えていく、あらゆる工業の原点である鍛冶屋という職人衆。彼らや彼らが作る鉄の道具に魅了され、ライター・かくまつとむと写真家・大橋弘が、10年以上かけて全都道府県の匠を訪ね歩いた集大成。全136軒のルポタージュに加え、カタログ、用語集などの資料も掲載。

ワールドムック633
鉄の匠を訪ね歩く 日本鍛冶紀行

文=かくまつとむ、写真=大橋弘
定価:1905円+税(税込価格2000円)、B5判、176ページ
発行:株式会社ワールドフォトプレス

日本鍛冶紀行

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