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取材ノート
南極海のヒョウアザラシ

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筆者の取材ノート
キム・ヒーコックス

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写真家の取材ノート
ポール・ニックレン


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「取材現場から」は、筆者と写真家へのインタビューを編集したものです。
本誌の記事と一部が違うことがあります。

写真=Melanie Heacox(上)and Mark Thiessen(下)


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取材現場から 取材現場から PHOTO
南極海のヒョウアザラシ

筆者の取材ノート
キム・ヒーコックス
Best 最高の経験

 数年前のことだ。割れた流氷をかき分けながら進む砕氷船の上で、30人ほどの人たちと一緒に船首に立ち、食い入るようにあたりの景色を見つめていた。前方にアザラシが見えた。ちょうど船の航路上に浮かぶ流氷の上で、ごろりと寝ころんでいる。その前に、我々はすでにアザラシに出会っていた。たくさんのカニクイアザラシ、それに数頭のウェッデルアザラシだ。彼らは船が近づくと、大急ぎで氷の上から逃げていった。

 ところが今度のアザラシは身動きひとつしない。「ヒョウアザラシだ」と私が言うと、みんな、身を乗り出した。徐々に近づいていくと、アザラシは目を覚まし、背中を弓なりにそらして口を開けた。アゴが外れてしまいそうだ。鋭い歯がずらりと並び、新たな獲物を発見したというように目がきらりと光るのが見えた。こちらが全長91メートルの船の上で、海面から12メートルも高いところにいることなど、まったく意に介していない。あの時のアザラシの表情は、機械だろうが鋼鉄だろうが、なんでもエサにしてしまいそうに見えた。ぎりぎりまで近づいたところで、アザラシは氷の上から海へとすべりおりていった。私たちはひと目だけでもその姿を見ようと深い海に目を凝らした。しかし見えたのは、水に映った自分たちの姿だけだった。私はあの経験を決して忘れないだろう。


Worst 最悪の体験

 2月下旬から3月上旬にかけての南半球の夏の間、南極のペンギンたちは広い営巣地を離れ、海で過ごす。まずは成鳥たちが海に入り、羽が生え揃ったばかりのヒナが後に続く。ほとんどの鳥類は、羽根が生え揃うと飛び方を習うのだが、ペンギンが習うのは泳ぎ方だ。彼らは岸辺に立ち、海と対峙する。全身に、この中へ飛び込むのだという意志がみなぎっている。海は彼らの生存に不可欠で、魚やイカ、オキアミがいっぱい詰まった食料庫のようなものだ。海に飛び込むのは、とてつもなく恐ろしい。そこではヒョウアザラシが油断なく目を光らせ、動きが遅く不用心なペンギンを捕まえようと待ちかまえている。ヒョウアザラシは数百頭、いや数千頭のペンギンを殺す。巨大なアゴを使ってペンギンを前後に振り回し、一瞬のうちに骨から肉を引きちぎるのだ。

 以前、南シェトランド諸島で、若いジェンツーペンギンの大きな営巣地の中に立ち、彼らが冷たい水の中に思い切って飛び込む様子を眺めたことがある。ヒョウアザラシがあまりにたくさんのペンギンを捕まえるので、途中で見ていられなくなった。アザラシは自分たちの子どもに狩りの仕方を教えており、その様子は飢えをいやすためというよりは、スポーツを楽しんでいるようだった。ペンギンを捕まえ、もてあそび、放して泳がせたかと思うと、また何度でも捕まえる。それが何時間も続いたので、私はとうとうその場を離れずにはいられなくなってしまった。


Quirkiest 最も奇妙な思い出

 南極にはこれまで30回ほど行き、数多くのヒョウアザラシを見てきた。最初の1頭を見た時の印象は、それまでに聞いていた彼らの評判に近いものだった。非常に攻撃的かつ獰猛で、ゴムボートに噛みつき、大きくて犬のような頭部についたギラリと光る目でこちらにらみつけると聞いていたのだ。

 私を含めて10人が乗ったモーター付きのボートは、穏やかな晴天の下、氷山の間を進んでいった。大きな氷山を回り込むと、ヒョウアザラシがこちらに背を向けて氷上に寝そべっているところに出くわした。まるで電流が走ったように、みんな興奮した。最初は距離を置いたまま、静かに見ていた。船外モーターを切ってゆっくりと進み、徐々に近づいていく。カメラのモーターの静かなうなりが聞こえる。アザラシは顔をこちらに向け、目を閉じ、口をひきつらせながら眠っている。わずか3メートルの距離まで近づいた時、アザラシが突然目を覚ました。目を上げ、こちらをじっと見ている。私たちは身動きできなかった。すると、アザラシは頭を下げてあくびをすると、再び眠ってしまった。それで終わりだった。もうぴくりともしない。屈強で獰猛なヒョウアザラシにとっては、ボートいっぱいに乗り込んだ人間たちなど退屈で、夢の方がまだ面白かったのだろう。









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