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特集
取材現場から
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郷愁を誘うハテライトの人々
記事の筆者と写真家が、取材現場から報告する「最高の経験」、「最悪の体験」、そして「最も風変わりな思い出」。



本誌に載らなかったオンラインだけの写真。撮影条件も紹介します。


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文・写真=ウィリアム・アルバート・アラード

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19世紀に欧州から新大陸へと渡り、北米各地で古風な共同生活を営むキリスト教信者「ハテライト」。伝統的な教えを今も守る彼らの村を訪ねた。

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1969年 夏
 人類が初めて月に立ち、ベトナム戦争反対のデモが繰り広げられていた。その夏、私は米国モンタナ州中部にある「ハテライト」と呼ばれる敬虔なキリスト教信者たちの共同体を訪ね、その暮らしを取材した。サプライズ・クリークと呼ばれるこの村で生活する彼らの暮らしぶりは、世間からかけ離れていた。この取材を通して私がハテライトの人々と結んだ友情は、いまなお続いている。当時、私はまだ若く、4人の子どもの父親で、長男のスコットはまだ9歳だった。

2004年 秋
 人類が月に行く計画は途絶えてしまったが、新たな戦争が始まっていた。長男のスコットは44歳になり、まもなくこの世を去る運命にあったが、まだ誰もそのことを知らなかった。
 私はイングリッシュ・スプリンガー・スパニエルの子犬を道連れに、小型トラックで再びモンタナに向かっている。サプライズ・クリークのハテライトについて、新しい記事を書くことになったのだ。その途中、ミネソタ州ミネアポリスの郊外に住むスコットのもとに立ち寄った。この取材をためらっていた私は、スコットに尋ねた。「ハテライトの記事をまた書いたら、二番煎じにならないかな」。スコットはメラノーマ(悪性黒色腫)という、たちの悪い皮膚がんにかかっていたが、若々しく健康そうに見えた。彼は答えた。「父さん、こんな機会は二度とないよ」。スコットの言葉に励まされた私は、モンタナに向けて出発した。
 数日後、ダリアス・ウォルターと妻アニーが暮らす木造の家にたどり着くと、わが家に戻ったような気がした。最初の取材のあと長年にわたって、私は何度もこの村を訪れていた。愛犬サラを連れて、鳥撃ちに出かけたこともある。泊まるのはいつもウォルター家だった。娘のテリーなどは、ウォルター家の人々を「父さんのもう一つの家族」と呼んでいたほどだ。
 65歳のダリアスは、台所のテーブルでいつもの椅子に座っている。私より2、3歳年下で、長年の親友だ。ハテライトの男性は、老いも若きもサスペンダーで吊ったズボン姿をしている。あごひげを生やしているのは、既婚男性のしるし。若いときより恰幅がよくなり、ちょっと赤ら顔になってはいたが、目の輝きと温かな笑顔、それに鋭いユーモア感覚は健在だ。白いカーテンがかかった台所の窓からは、芝生の庭と鳥の餌台が見える。物干しには、女性が着る長いドレスやスカート、白いブラウス、男性の黒ズボンと白い靴下、格子縞のシャツが大小取り混ぜてずらりと並び、秋風にはためいている。
 庭の向こうに見える未舗装の田舎道は、木造の家々やトレーラーハウス、共同の炊事場と食堂、そして教会へと続く。村の名にもなった小川、サプライズ・クリーク沿いには菜園や古ぼけた羊小屋が点々と連なり、畑では冬小麦が芽吹いたところだ。道のかなたには雪をかぶったロッキー山脈が遠くに望める。
 ダリアスは、ワイヤレス電話機で誰かと話している。ワイヤレス電話機があるのは、村ではこの家とサム・ハウファー牧師のところだけだ。電話の相手はテキサス州の男性で、前にも何度か連絡してきた。村に参加したいというのだ。しかし、よそ者が村に加わることはめったにない。ハテライトは改宗を奨励していないのだ。「何度かけてきても、時間の無駄だよ」と、ダリアスはぶっきらぼうに言った。「生まれたときからハテライトでも、大変なんだから」  米国人はたいてい服装や思想の自由、個人の権利を重視するが、ハテライトの暮らしにはそうした個性の入る余地はない。すべての財産は村が所有し、私有財産も個人名義の銀行口座もない。個人の持ち物もプライバシーもほとんどない。そのかわり、衣服や食物には困らないし、共同体に所属している安心感がある。ハテライトは、北米で共同生活を送るキリスト教系宗教集団でもとりわけ歴史が古い。若者が抜けるどころか、人口は増えている。私が初めて訪れたときは50人ほどだったサプライズ・クリークの人口も、いまでは125人。そろそろ別の土地に新しい村を作る時期だ。500キロほど離れたモンタナ州北東部では、新しい村「プレーリー・エルク」の建設が進んでいる。誰が現在の村に残り、誰がプレーリー・エルクに移るのか。それをこれから決めなくてはならない。プレーリー・エルクはダリアスご自慢の新天地で、ミズーリ川の南に広がる3000ヘクタールの土地を、村は320万ドルで購入した。知りあったときダリアスは農業をしていたが、1994年にサプライズ・クリークの前代表が死去すると、投票で新代表に選ばれた。代表の責任は重い。数多くの規則を徹底させ、村の会計を管理しなければならない。彼は毎朝、台所の隣室で、請求書の支払いに応じたり、男性たちに仕事を割り当てたりと、村の運営に精を出す。
 午後も遅くなって、私はウォルター家の裏手で子犬に水と餌をやり、キャリーケースに入れた。たちまち小さな子どもたちが集まった。男の子は手縫いの帽子と上着、女の子は長いドレスを着て、三つ編みにした髪をスカーフで覆っている。子どもたちは私を必ずフルネームで呼び、矢継ぎ早に尋ねる。「ビル・アラード、この犬はサラなの?」と7歳のルネが尋ねる。「いいや、サラはもう死んだよ。こいつはバスターというんだ」。子どもたちは一瞬神妙な面持ちで黙りこむが、長くは続かない。「ビル・アラード、バスターはキジを捕まえられるかな?」と6歳のグレゴリー。「どうだろう。まだ子犬だからね。そのうちわかるよ」。「ビル・アラード、狩りをするとき一緒に連れていってくれる?」と9歳のライアンが聞く。「いや、今日はだめだ」。私がそう答えるのを子どもたちは百も承知しているが、聞かずにはいられないのだ。
 今朝は冷えこみが厳しいが、300羽の七面鳥を解体しなければならない。サプライズ・クリークのような自給自足の村では、家畜の処理がよく行われている。肉のほとんどは村人が消費する。全員総出の大仕事で、作業小屋には甘ったるい血のにおいと湿った羽根の煙くさいにおいが混じりあっている。
 外では若い女性たちが、湯の煮えたぎる長桶に頭を落とした七面鳥を放りこんでは、長い木の棒でかき混ぜる。リタという名の若い母親が桶をかき回している。ほおには七面鳥から飛び散った血がひと筋ついていた。ハンカチで拭いてやろうかと思ったが、やめておいた。

詳しくは本誌をお読みください。

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特集関連の豆知識

 ウォルター家の女性たちが、サプライズ・クリークのハテライトの人々のためにオレンジロールを作る時は、一度に100人分以上を用意する(本誌7月号108-109ページ)。誰でも、家族や友人のために作れるよう、アニー・マリー・ウォルターが少人数向けのレシピを教えてくれた。

サプライズ・クリーク・オレンジロール

生地:
イースト 小さじ 2 1/2
砂糖 大さじ4 3/4
水 大さじ4 3/4
小麦粉 3カップ
(このほかに、必要に応じて 1/2カップ)
サワークリーム 1/2カップ強
塩 小さじ 1/4
卵 小2個
バター(室温でやわらかくなったもの) 大さじ4 3/4

フィリング:
バターを溶かしたもの 大さじ1 1/2
オレンジの皮をおろしたもの 大さじ4
砂糖 大さじ 11
ココナッツシュレッド(細かく刻んだもの) 大さじ 11

シロップ:
サワークリーム 大さじ 5 1/3
オレンジジュース 大さじ3 1/2
バター 大さじ 2 2/3
砂糖 3/4カップ

 砂糖小さじ 2 1/2とイーストをあわせ、水を加えて10分置く。小麦粉3カップと、残りの材料をすべて混ぜ合わせる。必要に応じて小麦粉を足しながら、生地を作る。2時間発酵させたあと、生地を2つに分ける。
 2つに分けた生地を、それぞれ直径30センチほどのドーナツ形にし、それぞれの表面に溶かしたバターを塗る。フィリングの材料をすべてまぜあわせ、2つの生地のうえに半分ずつ、均等にひろげる。生地の片端を持って、フィリングを包むようにかぶせ、筒状にする。それぞれを直径20センチのパイプレートにのせ、プレートの縁に沿って円になるよう形を整える。楔形に切れ込みを入れ、1時間発酵させる。175~190度のオーブンで20分~25分焼く。
 焼き上がり時間にあわせて、小さな鍋にシロップの材料をあわせ、時折かき混ぜながら3分間沸騰させ、オーブンから出したオレンジロールの上にかける。
 直径20センチのオレンジロールが2つできあがるので、それぞれを12個にきりわける。

――ブラッド・スクライバー

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関連リンク

北米のハテライト:ハテライトの人々の歴史や暮らし、ライフスタイルなどを紹介しているサイト。
http://www.hutterites.org



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