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取材ノート
独立に燃えるクルド人

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筆者の取材ノート
フランク・ビビアーノ

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写真家の取材ノート
エド・カシ

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「取材現場から」は、筆者と写真家へのインタビューを編集したものです。
本誌の記事と一部が違うことがあります。

写真=Brian Strauss (上) and Rebecca Hale

取材現場から 取材現場から PHOTO
独立に燃えるクルド人

筆者の取材ノート
フランク・ビビアーノ
Best 最高の経験

 海外、とりわけ危険地域での取材が成功するかどうかの鍵を握っているのは、現地コーディネーターだ。彼らは外国人記者の資料には載っていないような情報を持っている。地元の地理や住民に関する詳細な情報、政府高官や反乱軍との秘密の接触ルートはもちろんのこと、彼らの直感的な機転がわれわれの生死をも決定すると言っても大げさではない。
 イラク北部では、イェレヴァーン・アドハムという若いクルド人が、私と写真家エド・カシの運命を握っていた。イェレヴァーンは危険な場面で第六感を働かせ――どたんばの回り道のおかげで、命が助かったこともある――、興味深い情報に行き着く勘もすばらしかった。イェレヴァーンはサダム・フセインが彼の故郷のハラブジャで行った化学兵器による大量虐殺で、家族の半分を失っていた。生存者の一人でイェレヴァーンのいとこにあたる男は、残ったアドハム一族の事実上の家長だったが、私がイラクに滞在した最後の週に、ハラブジャで起きた自爆テロで亡くなった。その日、私たちの間からは、現地コーディネーターと顧客をつなぐ、いつもの仲間意識が消えていた。イェレヴァーンは一言もしゃべらず、その沈黙が、超えることのできない壁をはっきりと物語っていた。取材が終われば、エドと私はイラクを去る。だがイェレヴァーンはずっとこの国で生きていかなければならないのだ。


Worst 最悪の体験

 イラクの他の地域と違って、クルド人の暮らす北部は建設ラッシュの真っ只中で、これまでにない奇妙な現象が起きていた。労働力が不足がちで、建設現場で働けるクルド人が足りないのだ。解決するには外部から日雇い労働者を連れてくるほかなく、事実上雇うことのできるのはスンニ派アラブ人の失業者たち。クルド人自治区の武装境界線の南にあるモスルやキルクークに住む人々だ。
 武装した兵士の指揮のもと、労働者たちは作りかけの建物の床に数百人という単位で雑魚寝をし、朝6時になるとクルド人自治区の中心地アルビルのモスクの前に集まって工事の請負人を待つ。もしその日の仕事がなければ、9時には町を出て、明日こそ仕事がありますようにと祈るほかない。サダム・フセイン率いるアラブ人が支配するイラクで、少数派として抑圧され、いためつけられてきたクルド人が上に立つという、いわば階層の逆転ともいうべき皮肉な状況も、こうした労働者たちは当然のこととして受け入れていた。「クルド人が私たちを嫌う理由はわかっています。私たちがここにいるのを許されるのは、ほかに選択肢がないからだということもね」とモスルから来た労働者のひとりは言った。この一言が、新生イラクの構築が直面する問題を象徴していると言っていいかもしれない。根深い憎悪と分裂の歴史を抱える人々が、ひとつの国を作ろうとしているのだから。


Quirkiest 最も奇妙な思い出

 私たちがアルビルに入ったのは2005年の夏。このクルド人地域の中心都市へと向かう旅は、トルコのディヤルバキルから始まった。まず朝4時半に、予約していた特別なタクシーで、6時間かけてイラク国境に近いジズレをめざす。クルド人のタクシー運転手は事情に精通しており、車のキーを3つ、携帯電話を3つ持っていた。ジズレに着くと、タクシーを乗り捨てて、あらかじめ第一携帯電話で連絡を受けていた、2つ目のキーの普通の車に乗り換える。32キロほど行った所で、運転手は第二携帯電話で短く会話し、今度は数百メートル離れた場所に隠されていた3番目の車に移った。そしてこの車で国境を超え、イラクのザーホウに入った。この先も第三携帯電話で連絡をとりながら、2回車を乗り換えて、ついに出発から11時間後に約480キロの旅を完了した。
 三台の携帯電話も、車の乗り換えも、ここでは決して珍しい話ではない。ATMも小切手も、通常の銀行さえない国に行く人たちは、誰もが現金で数千ドルを携えている。国境付近の者は誰もがその事実を知っている。たくさんの携帯電話と車のキーは、安全な旅を行うための“保険”なのだ。









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