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特集

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文=シンシア・バーンズ 写真=デビッド・マクレーン

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 米国ミズーリ州南西部を緩やかに流れるサック川。そのほとりで考古学者のニール・ロピノーたちが懸命に、貴重な遺物の“救出活動”に取り組んでいる。この遺跡は、北米先史時代の遺物の宝庫。近くの川にできる大渦(おおうず)の名にちなみ、「ビッグ・エディ」と呼ばれている。
 10キロ上流のストックトンの町にある水力発電ダムは、フル稼働時に毎分約1万1000トンもの水をサック川に放水する。その水の勢いで、川岸は年に1メートル以上も浸食が進んでいる。「遺跡はどんどん削られ、15年もすれば跡形もなく消えてしまう」と、ロピノーは嘆く。
 私が現場を訪れた日、発掘隊は30メートル四方の調査抗の底で作業に励んでいた。川岸からの距離はわずか3メートル。そこで、1万3000年以上前の遺物が見つかっている。
 ダムが建設される前、サック川は周期的に氾濫を起こした。そのたびに一帯は沈泥で覆われ、北米先住民やその祖先たちが地上に残した道具やゴミはことごとく、地中に埋まった。層状に堆積した地層を手がかりに、考古学者たちは遺物がどの時代のものかを突き止める。
 「ここは、古代の人々の作業場になっていた時期が何度かあったようだ」と、発掘責任者のジャック・レイは語る。「何千年にもわたって、人々は時折この場所に戻ってきては、一帯で産出するチャート(珪質堆積岩)で石器を作っていた」
 ビッグ・エディからの出土品は多様なだけでなく、その古さでも注目されている。発掘された石器の年代は、人々がマンモスを追いかけていた氷河時代にまでさかのぼる。
 こうした古い遺物の発見により、人類がアメリカ大陸に渡った時期についての議論がますます盛んになった。従来の説では、最初にやって来たのは、クロービス人と呼ばれる人々と考えられてきた。テキサス州で発見された彼らの最古の遺物は、約1万3500年前のものだ。
 だがロピノーらは、それ以前に人類が活動していた痕跡を見つけた。楕円形の石と大きな砂岩は、石鎚(いしづち)とそれを使う台だった可能性がある。同じ深さで見つかった木炭を放射性炭素年代測定法で調べると、1万4000年~1万4600年前のものと判明した。つまり、クロービス人の最古の遺物よりも、500~1000年以上古いことになる。
 ロピノーとレイは、地元の収集家の力も借りている。家族がサック川沿いに土地を所有するクラーク・モンゴメリーもその一人だ。
 ロピノーは話す。「クラークのような人々は、私たちの目となり耳となってくれている。浸食されていく川岸で、一年中、遺物を集めてくれる。おかげで、調査も進む」。ロピノーらはそのお返しに、見つかった石器が作られた年代を調べている。
 夕暮れになり、作業が終わると、ビッグ・エディは先史時代と同じく野営地となる。夕食後、ロピノーとレイはたき火のそばに腰を下ろし、その日見つけた品々について語り合う。遠くからダムの放流する音が聞こえてくる。そのかすかな響きを時折、近くのキツツキやフクロウの声がさえぎる。月明かりを浴びた川面で、小さな渦が巻くのが見えた。
 二人の考古学者は黙ってサック川の流れに耳を傾けながら、夜明けまでにどんな遺物が流されてしまうのだろうかと、思いを巡らせた。

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日本版の過去記事

2000年12月号「人類の起源 米大陸へ初めて渡った人類」


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