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取材ノート
石油 豊かな恵みを受けるのは誰?

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筆者の取材ノート
ニック・コッチ

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写真家の取材ノート
パスカル・メートル

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写真家の取材ノート
エド・カシ

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「取材現場から」は、筆者と写真家へのインタビューを編集したものです。
本誌の記事と一部が違うことがあります。

写真=Pascal Maitre (上), Pascal Maitre (中), Rebecca Hale

取材現場から 取材現場から PHOTO
石油 豊かな恵みを受けるのは誰?

筆者の取材ノート
ニック・コッチ
Best 最高の経験

 世界はさまざまな基準で二分できるが、まともなクロワッサンが作れる社会と、そうでない社会の違いはなかなか説明が難しい。どの国を、国連の安全保障理事会の常任理事国に選任するかというのなら、もっと大切な基準があるだろう。でも、私にとって、幸せを感じられる場所かどうかの基準は、ケーキ屋の看板にフランス語で「パティスリー」と書いてあるかどうかだ。歴史の中で、多少なりともフランスと強い結びつきをもった時代があることは、その国にとって大きな財産といえる。1960年に独立したチャドも、そんな国のひとつだ。列柱のある中央商店街は今も、シャルル・ド・ゴール通りと呼ばれていて、町で一番と評判のパティスリー「アマンディーヌ」も、この通りにある。
 焼きたてのパン、ケーキ、フルーツタルトのなんとも甘い香りに誘われて、店内に足を踏み入れた。積み重ねられたクロワッサンとパン・オー・ショコラが、買っていけと訴えかけてくる。上品な雰囲気の店員に、まともなクロワッサンが手に入らないヨハネスルブルグまで、24時間かけて持って帰るので、しっかり包装してほしいと言った。
 できたてのおいしさをアルミ箔に閉じ込めて、クロワッサンは我が家にたどり着いた。形は少しくずれてしまったものの、その何よりのごちそうは、遠く離れた異国の地を思い起こさせてくれた。


Worst 最悪の体験

 「許可が下りましたよ。明日、大使館にファクスしておきます。よかったですね」。ナショナル ジオグラフィックから駐米ナイジェリア大使にあてた手紙を添えて、米国ワシントンでビザを申請してから3カ月。ついにビザがおりた。許可を待つ間、いらつく気持ちをおさえながらナイジェリアの首都アブジャへ幾度となく電子メールを送り、電話をかけ、あらゆる役人にせっついた。さらには、大統領の報道担当官まで巻き込み、耳を傾けてくれる海外担当のマスコミ仲間には、自分が受けている扱いについてぶちまけた。
 みんなに同じことを言われた。許可が下りないのは、ナイジェリアの石油産業と、政情が不安定で環境破壊が進むデルタ地帯を取材したいと、申請書に書いたからだというのだ。彼らの意見はおそらく正しかった。
 だが、1980年代に2年間ナイジェリアで暮らし、その後も何度となくこの国を報道してきた経験から、真っ向勝負が一番だという確信があった。アブジャ在住で、いつも仲介をしてくれる人から、ビザ取得を伝える興奮気味のメールを受け取ったとき、私の方針は間違っていなかったと思った。残念だったのは、すでにナイジェリアの取材をあきらめざるを得ない状況だったことだ。アフリカの石油の話はチャドを取り上げる方向で、すべて準備が整っていた。


Quirkiest 最も奇妙な思い出

 チャド南部のドバでのこと。赤レンガの大聖堂の外には、病人や物乞いが集まっていた。その人たちから少し離れた日陰に、三輪の車椅子に乗った体の不自由な男性がいた。この人たちは、毎週日曜日の朝ここにやってきて、ミサを終えた人々が出てくるのを待っているのだろうと思った。施しは受けられるだろうが、小銭程度だろう。
 教会の中ではひんやりした空気が心地良く、磨き上げられたタイルの上を音をたてないように歩いた。少なくとも600人ほどの人々が、木のベンチにぎっしりと座っていた。身なりから察するに、貧しい人たちのようだった。新たな石油ブームの恩恵にあずかっていないのだ。チャド南部の住人のほとんどがそうだった。
 外に出ると、先ほどの体の不自由な男性が、こちらを見ている。体は痩せ細って曲がっていたが、腕の筋肉はがっしりしていて、目には怒りにも似た力が満ちていた。私は、彼がその日に会う人の中で最も金持ちの部類に入るに違いない。だが、彼が興味をもったのは、どうみても私のお金ではなかった。彼と話を始めて、石油が彼の国を変えると思うが、それについてどう思うか聞いてみた。「石油?ばかばかしい。お金は全部、あんたたち西洋人が政権を握らせている、教養のない連中の懐に入っていくからね」









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