タイタンに“魔法の島”が出現

2014.11.12
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着色加工したタイタンのモザイク画像(上)。北極地域の雲の下に海が見える。下はカッシーニによるフライバイ(接近通過)の軌道。クラーケン海の一角を調べた。

Images (above) by NASA/JPL-Caltech/University of Arizona/University of Idaho; (below) NASA/JPL-Caltech/ASI/Cornell
 土星探査機カッシーニが10日、土星最大の衛星タイタンに2つの新たな“島”を発見した。きっかけは2013年の6月。氷に覆われたタイタンの湖に浮かぶ小島のような物体が観測されたが、数日後には跡形もなく消えるという不可解な現象が確認されている。 2004年の土星軌道投入からカッシーニが撮りためたタイタンの画像には、凍った地表と無数の海や湖、川がとらえられている。そして今夏は、2013年に発見された最初の島が、水面で光ったと思ったら突然消える魔法のような現象を繰り返した。

 この「マジックアイランド(魔法の島)」の発見は憶測を呼んだ。鏡のように滑らかな液体メタンの海に、波しぶきが上がっただけではないのか? いずれにせよ偶然の出来事にすぎないと思われた。

 ところが、8月21日のフライバイ(接近通過)で、不思議な光がさらに2つ確認される。過去のフライバイでは見つからなかった魔法の島だ。アメリカ、コーネル大学のアレキサンダー・ヘイズ(Alexander Hayes)氏は、「不意に現れた」と振り返る。ヘイズ氏はアメリカ天文学会惑星科学分科会(DPS)の会合でこの調査結果を発表した。

 チームの一員でマサチューセッツ工科大学(MIT)のジェイソン・セーデルブロム(Jason Soderblom)氏は、「波とも思えるし、氷山のような硬い物質かもしれない」と話す。「水面で何かが光を反射していることは間違いない」。

 太陽系の天体で、雨に浸食された地形は地球とタイタン以外にはない。波立つ湖が存在する可能性は、継続的な調査を行う十分な動機となる。

「観測を始めて10年になるが、タイタンから目を離すには早すぎる」とヘイズ氏。「砂丘や湖、海、川の存在は、原始の地球と比べても興味深い。研究者の理想郷だね」。

 8月21日のフライバイでは、最大の海、クラーケン海を約960キロ上空から幅200キロにわたってレーダーで観測。

 その結果、深さは200メートルを超える事実が判明した。満たすメタンの量も膨大になる。アメリカの五大湖で最も大きいのはスペリオル湖だが、2番目に大きいリゲイア海の容積はその3倍に達するという。

◆フライバイの成果

 海や湖の存在は地球とタイタンだけの特徴だが、両者の様相はまったく異なる。タイタンの表面温度は摂氏マイナス180度ほどで、湖はメタンやエタンなどの液体のガスで満たされているからだ。

 湖の深さを周回軌道から測定する方法は、ローマ・ラ・サピエンツァ大学の惑星科学者マルコ・マストロジュゼッペ(Marco Mastrogiuseppe)氏が去年確立したばかりだ。NASAジェット推進研究所(JPL)のカッシーニ・チームが早速応用し、8月のフライバイが実現したという。

 一方、分光器による観測では、魔法の島が水面下の氷山、または水上の霧である可能性が排除されたと、MITのセーデルブロム氏は説明する。

 クラーケン海が広がる北半球には、間もなく春が訪れる。かつて穏やかだった海面をかき乱す、不思議な事象がさらに確認できるのではないかと、前出のヘイズ氏らは期待している。

「新たな島が出現する可能性が高い。タイタンの湖や海の季節変化には、まったく圧倒されるよ」。

Images by (above) NASA/JPL-Caltech/University of Arizona/University of Idaho; (below) NASA/JPL-Caltech/ASI/Cornell

文=Dan Vergano

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