コウモリ、ライバルのソナーを音で妨害

2014.11.10
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テキサス州のイカート・ジェームス・リバー・バット・ケーブ保護区で飛び回るメキシコオヒキコウモリ。

Photograph by Joel Sartore with Cole Sartore / National Geographic Creative
 メキシコオヒキコウモリ(学名:Tadarida brasiliensis)がライバルの捕食能力を妨害できることが初めて明らかとなった。 近くのものに音波を跳ね返らせて周囲に何があるのか知ることを反響定位(エコーロケーション)という。今回、コウモリが別のコウモリの反響定位を超音波で妨害する様子が観察された。

 コウモリの多くは昆虫などの獲物に照準を合わせる際に反響定位を用い、この能力なしで狩りを成功させることは不可能に近い。

「Science」誌オンライン版に11月7日付けで掲載された研究によると、同じ種の仲間が獲物に接近した際、メキシコオヒキコウモリが妨害超音波を発することが判明したという。

 メリーランド大学の博士課程で生物学を専攻するアーロン・コーコラン(Aaron Corcoran)氏は、この行動を偶然発見した。

 アリゾナ州とニューメキシコ州の境でヒトリガの一種、グローツタイガーモス(学名:Bertholdia trigona)がオオクビワコウモリ(学名:Eptesicus fuscus)のソナーを妨害する様子を調査していた同氏は、上空を飛行するメキシコオヒキコウモリが音を発しているのに気がついた。

 研究室に戻って音響データを見直したところ、メキシコオヒキコウモリから発せられた音は、タイガーモスがオオクビワコウモリのソナーを妨げて身を守るのに使う超高速のクリック音に不気味なほど似ていたという。

 そこで、コーコラン氏はメキシコオヒキコウモリが別のコウモリの超音波を妨害しようとしていたとの仮説を立てた。

◆コウモリのざわめき

 コーコラン氏らはフィールドに戻り、メキシコオヒキコウモリが発する音を数時間にわたって録音した。

 メキシコオヒキコウモリが昆虫に接近すると反響定位音の間隔は徐々に短くなり、“フィーディング・バズ音(feeding buzz)”と呼ばれる特徴的な音に変化することがわかっている。

 録音データを分析すると、コウモリが別のコウモリのソナーを妨害するのはそのコウモリがフィーディング・バズ音を発しているときに限定されることが判明し、当初の仮説を裏付ける結果となった。

 その後、コーコラン氏は録音した妨害シグナルを再生し、野生のメキシコオヒキコウモリの行動に与える影響を調査。

 コウモリが昆虫を捕まえる直前にシグナルを再生した場合、捕食に成功する確率は85.9%低下した。

 一方、コウモリが昆虫に狙いを定めた瞬間に合わせて妨害シグナルを再生しなかった場合や、音の高さを変えた場合は捕食能力に影響を及ぼさなかった。

 コーコラン氏は妨害シグナルが発信側の捕食能力を高める役割を果たしているとみているが、立証するにはさらなる研究が必要となる。

◆妨害の達人

 妨害シグナルを用いるメキシコオヒキコウモリ以外の種については、まだ特定されていない。

 しかし、コウモリは極めて多様なため、別の種でシグナルが進化していたとしても驚くには当たらないとコーコラン氏は言う。

 トロント大学でコウモリの反響定位を研究する生物学者ジョン・ラトクリフ(John Ratcliffe)氏は今回の研究には参加していないが、共通の食物源をめぐるコウモリ間の競争がこのような行動の進化に“最適な環境”をもたらしたと指摘する。

「メキシコオヒキコウモリは妨害の達人だよ」。

Photograph by Joel Sartore with Cole Sartore / National Geographic Creative

文=Virginia Morell

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