サラマンダーを襲うアジア産の真菌

2014.11.05
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東アジア原産の真菌Batrachochytrium salamandrivorans(Bs)による重度の感染で皮膚病変を呈したファイアサラマンダー。

Photograph by Frank Pasmans
 サラマンダーは毒を吐き、炎を消すことができるとの伝説がある。しかし、このような力をもってしても新たな脅威から身を守ることは難しそうだ。「Science」誌オンライン版に10月31日付けで発表された研究によると、最近になって東アジアからヨーロッパに到達した真菌が多数のサラマンダー(サンショウウオやイモリなどの両生類有尾目)を襲い、ヨーロッパやアフリカなどに生息する個体の生命を脅かしているという。

 アジアから入ってきたのは、過去数十年にわたって世界中のカエルやサンショウウオなどの両生類を絶滅に追いやってきたカエルツボカビ(学名:Batrachochytrium dendrobatidis、以下Bd)の近縁種(学名:Batrachochytrium salamandrivorans、以下Bs)だ。

 研究者たちは、Bdによる感染を運良く逃れたサラマンダーの多くが、2013年に発見されたこの菌の犠牲となるのではないかと懸念している。今回の試験では、ヨーロッパと北米を原産とする11種のサラマンダーがBsへの感染後、一匹残らず死んだという。

◆阻止は不可能

 黒地に黄色の模様が特徴的なファイアサラマンダーがオランダの森から姿を消したことがきっかけとなり、菌は昨年確認された。当初、研究者たちはツボカビの一種であるBdを疑ったが、2013年に行われた研究の結果、新たな種類のツボカビであるBsが原因と判明した。

 研究チームが行った試験の結果、北米及びヨーロッパ原産のサラマンダー17種中11種が全滅したという。

 残る6種は感染後も死亡することはなかった。また、アジアを原産とする3種のサラマンダーもBs感染を生き延びている。良いニュースのようにも聞こえるが、生き延びた種が菌をまき散らす可能性があると研究者らは警告する。

 この菌はアジアに約3000万年もの間潜んでいたことが遺伝子検査で明らかとなっており、現地の種はこの間に抵抗力を身に付けたとみられる。研究者らによると、菌はこういった両生類がペットとしてヨーロッパに渡ったことでオランダに到達した可能性が高いという。

 論文の共著者でベルギーのゲント大学に所属するアン・マーテル(An Martel)氏によると、ヨーロッパでの菌の拡大を阻止する方法はない。また、この菌がヨーロッパ中に広まり、北アフリカまで到達する可能性もあると同氏は指摘する。

◆サラマンダーのホットスポット

 アメリカに生息する野生の両生類での感染は確認されていないが、安心というわけではない。ペットとして飼育されるアジア原産の両生類はヨーロッパ同様、アメリカでも増加の一途をたどっている。一般的に、こういった生物が国境を渡る前に病気の検査を受けることはない。

 アメリカ林野局の生態学者ディディ・オルソン(Dede Olson)氏は今回の研究には参加していないが、アメリカ南東部が「サラマンダーの世界有数のホットスポットだ」と話す。同氏の説明によると、アメリカ南東部はサラマンダーの個体数、種の数が極めて多い。「この地域にBsのような菌が侵入した場合、多くの個体が失われる可能性がある」だけでなく、絶滅の危険性すらあるという。

 メリーランド大学の生態学者で論文の共著者でもあるカレン・リップス(Karen Lips)氏は、Bsを調査するネットワークの構築を目指すほか、連邦政府による輸入野生生物の監視を強化する法案を支持している。事態把握の前に蔓延したBdとは違い、Bsは大規模な拡大の前に見つけることができたと同氏は指摘する。

 オルソン氏も次のように述べた。「まだ到達していないということは、時間と希望が残されているということだ」。

Photograph by Frank Pasmans

文=Traci Watson

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