ティラピア、尿でメスを誘う

2014.11.04
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
水族館で撮影されたモザンビークティラピア(和名:カワスズメ、学名:Oreochromis mossambicus)。驚くほど複雑な社会構造を持つ魚として知られる。

Photograph by Ammit / Alamy
 尿に魅力を感じる動物はあまりいないが、オスのティラピアの尿に含まれるフェロモンが交尾相手を惹きつけていることが新たな研究によって明らかになった。 世界で2番目に多く養殖されるティラピア。この研究成果によって飼育と管理方法が改善されるかもしれない。

 モザンビークティラピア(和名:カワスズメ、学名:Oreochromis mossambicus)の尿がティラピア同士の交流に役割を果たすことは既に知られていたが、正確な仕組みについてはこれまで謎に包まれていた。

 それは驚くほど複雑なティラピアの社会構造に関係がある。

「ティラピアはとても興味深い魚だ。彼らは極めて社会的な動物で、オスは産卵場で階層を形成する」と、研究のリーダーでポルトガルにあるアルガルヴェ大学海洋科学センターに所属するティナ・ケラー・コスタ(Tina Keller-Costa)氏は語る。

「砂地に産卵床を掘ると、優勢のオスたちが通常真ん中に居座って小さな縄張りを攻撃的に守る」。

 戦いの間、オスは尿を頻繁に放つ。研究者らが優勢と劣勢両方の尿を調べたところ、女性ホルモンの一種、プロゲステロンに似たステロイドを含むホルモンが検出された。

 また、オスのティラピアが優勢であればあるほど、より多くのホルモンが尿に含まれることもわかった。

 近くを通りかかったメスはフェロモンの臭いを嗅ぎ取って、遺伝的に有利なオスを見分けるとケラー・コスタ氏は説明する。

◆尿のコンテスト

 さらに研究チームは、優勢のオスがフェロモンを多く含んだ尿を出すだけでなく、より大きい筋肉質の膀胱を持つことを付き止めた。

「膀胱を膨らませると、たくさんの尿を蓄えることができる。メスや競争相手に出くわすと、尿をすべて絞り出す」とケラー・コスタ氏は言う。

 一方、劣性のオスは、「はるかに小さい膀胱を持つため、少量のフェロモンしか放出できない」。

 尿に含まれるフェロモンはメスを惹きつけるだけでなく、メスの生殖器官を刺激して、卵を成熟させるホルモンの分泌も促すことがわかった。

「このようにして、オスは産卵の準備を整えるのだろう」と同氏は話している。

◆外来種の駆除

 世界中で最も多く養殖されている魚の順位は、1位からコイ、ティラピア、サケと並ぶ。ティラピアは味がよくて、栄養価も高く、比較的簡単に養殖できることで知られている。

 100種近いティラピアがいる中、食用として流通しているのはモザンビークティラピアとナイルティラピア(学名:Oreochromis niloticus)の2種だけだ。

 多くの養魚場は屋外の自然に近い環境にあるため、養殖魚が河川や湖などに逃げることはたやすい。その結果、「ティラピアは世界中の多くの地域で侵略的な外来種になっている」とケラー・コスタ氏は言う。

 もしこの侵略的なティラピアが新たな淡水域で生息するようになると、「ほとんどの在来種を脅かして、生態系に深刻な問題が生じる」。

 だが、「われわれが特定したフェロモンを罠に仕掛けることができたら、将来的にはティラピアの生息数をコントロールできるかもしれない」。

 研究結果は、9月22日付けで「Current Biology」誌に発表された。

Photograph by Ammit / Alamy

文=Stefan Sirucek

  • このエントリーをはてなブックマークに追加