爆発のロケット、なぜソ連製エンジン?

2014.10.30
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オービタル・サイエンシズ社製のロケット「アンタレス」は10月28日、バージニア州ワロップス飛行施設にある中部大西洋地域宇宙基地の0A発射台から打ち上げ直後に爆発した。

Photograph by Joel Kowsky / NASA
 爆発したNASAの無人ロケット「アンタレス」が、改良した旧ソ連製エンジンを採用していたことに疑問の目が向けられている。 打ち上げ失敗翌日の10月29日(米国時間)、事故現場となったバージニア州東岸にあるNASAのワロップス飛行施設において残骸の調査が行われた。国際宇宙ステーション(ISS)に食料、機材、実験用設備を運ぶ補給機シグナスを搭載していた同ロケットの損失額は2億ドルを超える。

 28日夕の記者会見において、ワロップス飛行施設の責任者ビル・ローベル(Bill Wrobel)氏は、ロケットが打ち上げの軌道をそれたことが明らかになったため、安全担当官がエンジン点火から20秒以内にロケットを爆発させたと報告した。

「誰もが映像で見て知っている以上のことは、われわれにもまだ分からない」と、アンタレスを製造したバージニア州ダレスのオービタル・サイエンシズ社のフランク・カルバートソン(Frank Culbertson)氏は述べる。「上昇が止まり、ロケットの1段目がやや分解したように見え、そして墜落した」。

 NASAの協力の下、オービタル・サイエンシズ社とアメリカ連邦航空局の調査チームは今後、打ち上げの映像、ロケットの遠隔測定データ、ロケットの残骸という3つの手がかりから事故の原因を探る予定だ。

 今回の打ち上げは、オービタル・サイエンシズ社が2008年にNASAから受注したISSへの物資補給ミッションの一環。総額19億ドルで計8回の補給を行う契約で、今回はその3回目だった。

「事故の原因が明らかになるまで、オービタル・サイエンシズ社は少なくともロケット打ち上げを凍結せざるを得ないだろう」と、宇宙関連のWebサイト「NASA Watch」のエディターで宇宙産業に詳しいキース・カウイング(Keith Cowing)氏は述べる。

◆疑惑のエンジン

 最初に点火するロケットの“1段目”には、NK33ロケットエンジン2基が採用されていた。NK33はもともと旧ソ連が月に宇宙飛行士を送る計画のために、40年以上前に製造されたものだ。しかし、同エンジンを搭載した大型ロケットN-1は4度の打ち上げにすべて失敗した。

 有人月面着陸競争は1969年に米国が勝利し、ソ連の計画は1974年に中止された。残ったロケットエンジンは倉庫に保管されるか、より小型のロシアのロケットに搭載された。

「今回の事故をきっかけに、ロシア製ハードウェアの採用をめぐる議論が再燃するのは必至だ」とカウイング氏は述べる。「ロシア製のロケットは頑丈で信頼性が高いことで知られるが、これほど古いものを使うリスクについて疑問の声が上がるだろう」。

 NK33ロケットエンジンは、1990年代半ばに約40基が米国のロケットエンジン製造会社エアロジェット社に売却されたが、その売却額は1基100万ドルと驚くほど安かったといわれている。新たなロケットの開発コストは数億ドルにも達し、またそれが成功につながるとは限らない。スペースX社のイーロン・マスク(Elon Musk)氏は、「ファルコン」ロケットの開発に3億ドルを要したと述べている。

 NK33エンジンは最新の電子機器と誘導機構を加えて改良され、「AJ26」という新たな名称を得た。AJ26は、ミシシッピ州ハンコック郡にあるNASAのジョン・C・ステニス宇宙センター、およびワロップス飛行施設での試験に合格し、これまで補給機シグナスの打ち上げに3回成功している(うち1回はデモンストレーション)。

 今回爆発したアンタレスに搭載されていたエンジンも、ステニスとワロップスでの試験に合格していたと、オービタル・サイエンシズ社のカルバートソン氏は述べている。

 しかし今年5月にも、AJ26(NK33)エンジンはステニスでの燃焼試験中に爆発事故を起こしている。こちらの事故も原因は今なお調査中だ。

◆ロシアへの依存

 米国がロシアの宇宙技術を採用して物議を醸すのは、今回が初めてではない。ウクライナをめぐって対立しながらも、米国がスペースシャトル引退後のISSへの人員輸送でロシアのソユーズに頼っていることは、米国議会で論争を呼んでいる。

 またスペースX社のマスク氏も、ライバル企業のユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)社が、米空軍から受注しているアトラスVロケットにロシア製のRD-180エンジンを採用しているとして批判している。

 2011年のスペースシャトル引退後、ロケット飛行の民間委託を推進することは、NASAが義務的な補給ミッションから解放され、宇宙探査に注力するための戦略とみなされていた。また民間企業に業務を委託することで、国内の宇宙産業の発展が期待された。

 今回の失敗によって、NASAがロケット打ち上げを民間企業に委託する傾向が変化することはないだろうとカウイング氏は述べる。2012年の米会計検査院の報告書は、ISSの補給ミッションや民間宇宙旅行の開始によって、2010年代にはこのような打ち上げが増加するとの予測を示している。

「今回の件に関して忘れてはならないのは、まだ事故の原因が特定されていないということだ」とカウイング氏は警告する。「ロケットの底部で爆発が起こるのをわれわれは目撃したが、それが何かを意味するわけではない。調査には時間がかかり、また調査したからといって、すべての答えが得られるとは限らない」。

Photograph by Joel Kowsky / NASA

文=Dan Vergano

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