体内受精の起源? 古代魚類化石

2014.10.22
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写真のオスに見られるヒレのような形のクラスパー(交尾器)のように、古代魚ミクロブラキウス(Microbrachius)には明らかにオスとメスの生殖器の区別があった。このことから、最も初期の脊椎動物であるミクロブラキウスが体内受精を行っていたことがわかる。

Photograph by Roger Jones
 鳥や蜂が存在するようになる何億年も前から魚類は体内受精を行っていたとの研究が、10月14日付で「Nature」誌に発表された。 アンティアルク属(Antiarchi)と呼ばれる硬い骨板の装甲を備え古代魚類は、およそ3億8500万年前に生息していた。顎を持つ最古の脊椎動物だが、これまで知られていなかった体の構造が今回明らかになり、繁殖のために体内受精を行った最古の生物であることが判明した。

 体内受精で繁殖した最古の脊椎動物は今まで考えられていたよりも進化樹を遡ることを示す新たな証拠を、フリンダー大学の古生物学者ジョン・ロング(John Long)氏の研究グループが発見した。

 これまで、アンティアルク属のような古代魚は放卵により繁殖していたとされ、メスが水中に卵を産み、オスが精子をかけると考えられて来た。

 しかし2008年、ロング氏らは3億8000年前に存在したマテルピスキス(Materpiscis、母なる魚を意味する)という体内に胎児を残した板皮類の化石を発見した。これは体内受精が行われていたことを示している。また、別種の板皮類に関するその後の発見により、ペニスのように機能するオスのクラスパー(交尾器)とメスの板のような生殖器を使って交尾が行われていたことが明らかになった。

 今回の新発見は、さらに古い形態を持つ板皮類のミクロブラキウスという古代魚に関するもので、脊椎動物の体内生殖の歴史が進化の木をさらに遡るものとなった。

◆生殖器探し

 現生のサメやエイにもクラスパーはあるが、今回の化石に見られる構造はそれらと異なっている。「化石のクラスパーは硬い骨でできており、骨板に固定され、動かすことができない」とロング氏は説明した。交尾をするためには、魚は骨ばった腕のようなものを使って接合部を探したのではないかと同氏は推測している。「横方向からスクエアダンスのような要領で交尾をしたと思われる」。

 今回の発見は世界中でクラスパーを持つ他の古代魚を探すことから始まり、同氏はイギリスとオランダの個人収集家のコレクションに行き着いた。そこで見つかった化石にはオスのクラスパーだけでなく、メスの生殖板も見られた。メスの生殖板は精子がオスからメスへと移動する短い時間の間、オスの生殖器をメスの体に固定する役割を果たしたと見られる。

◆生殖の進化

 ただし、初期の脊椎動物すべてが体内受精を行っていたかどうかはまだわかっていない。インペリアル・カレッジ・ロンドンの古生物学者マーティン・ブラゾー(Martin Brazeau)氏によると、クラスパーを持つ板皮類の存在は当時の一般的な生殖方法を代表している可能性がある一方で、板皮類に固有の方法であった可能性もあり、後の脊椎動物とは別に体内生殖を進化させたのかもしれないという。

 なお、今回の発見は古代魚の生殖行為そのものだけに関するものではない。オスに見られる骨のようなクラスパーとメスの特殊な生殖板の存在は、ミクロブラキウスが性的二型性を有する最も古い生物であることを示している。オスとメスの区別のある生物の最古の化石となる。

Photograph by Roger Jones

文=Brian Switek

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