小さなミニブタの大きな問題

2014.10.14
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ベトナム原産のポットベリー・ピッグ、デイジー・メイ。ミネソタ州セントポールのサラ・デイビス(Sarah Davis)さん宅でペットとして飼われている。

Photograph by Vincent J. Musi / National Geographic
 2012年、カナダのスティーブ・ジェンキンス(Steve Jenkins)さんとデレク・ウォルター(Derek Walter)さんは、友人の頼みで体重1.4キロのミニブタ「エスター」をもらい受けた。その時はミニブタだと思ったのだ。その後2年で、エスターは「ミニ」とは言えなくなった。それどころか、体重227キロに達した。「信じたくなかった」とジェンキンスさんは言う。「でも飼い始めて4カ月後には、想定以上に大きくなることは痛いほど明らかだった。毎日およそ340グラムずつ体重が増えて、今も成長中だよ」。

 ミニブタを飼い始める多くの人々の例にもれず、ジェンキンスさんとウォルターさんは、目の前の小さなブタがずっと小さいままだと思い込まされていた。おそらくティーカップに入るくらいにしかならず、イヌやネコ同様、家庭のペットに適していると。

 しかし、二人も間もなく気付いたのだが、そのような保証は単なる売り文句にすぎない。節操のないブリーダーがこうした売り文句を使う頻度は、この15年強でますます増えている。一括りにして「ミニブタ」と呼ばれる小型種のブタの頭数は、米国内で1998年の20万頭から、現在では100万頭にまで増えているとみられる。

◆ペットとして普及

 小ぶりのブタが米国で目を引き始めたのは1986年のことだ。ベトナムのポットベリー・ピッグ数十頭が米国の複数の動物園に輸入され、個人のブリーダーが目を付けた。彼らの一部が、ポットベリーとニュージーランドのクネクネブタ、ジョージア州のオッサバウブタ(スペイン原産)といった他の小型種との交配または近親交配を始め、さらに給餌制限をして育てた。

 こうした方法で生まれたブタは、例えば450キロを超えるような家畜のブタよりはずっと小さかった。しかし、一部のブリーダーが口約束するような「チワワくらいの大きさ」で済むことは決してない。そして、「ミニブタ」の体重は予測が不可能だ。

 今に至るまで、北米や需要の比較的小さい欧州でのミニブタの取引は、明確な決まりも規制もない産業で、ルールはあってもごくわずかだ。しかし一部の個人や設立段階の組織が、こうした状況を変えようと行動を起こしている。

 このほど設立された米国ミニブタ協会(American Mini Pig Association)は、全米のブリーダー250人から成り、厳格な倫理規定の創設と、適切な交配のための体高に基づく系統分類に取り組んでいる。設立メンバーの一人、ジェイミー・ヒューバート(Jaimee Hubert)氏は、協会のWebサイトを今年中に開設したいと考えている。

 ヒューバート氏らは同時に、購入契約の強化、購入希望者との細部にわたる面接、ミニブタに関する正確な情報の発信に努めている。しっかりしたブリーダー、保護活動家、保護施設の運営者たちが一致できる点が一つあるとすれば、「啓発が鍵」ということだ。

「ブタであれトカゲであれ、自分のペットの性質を理解することは、その動物をうまく世話していく上で欠かせない」と話すのは、スーザン・アームストロング・マジドソン(Susan Armstrong-Magidson)氏だ。元はブリーダーだったが、放棄されたブタの保護活動に重点を移し、1998年からブタの里親探しと引き受けシステム「ブタ紹介ネットワーク」(Pig Placement Network)を運営している。「道端の店や地域の家畜品評会で、あるいは素人のブリーダーからミニブタを買う人々がもっと情報を与えられていれば、そもそも買わなかったかもしれない」。

 ヒューバート氏は、悪質なブリーダーがまっとうなブリーダーの評判まで貶めることがあると懸念する。

 リッチ・ホイル(Rich Hoyle)氏は20年にわたりブタの保護活動に尽力しているベテランで、8年前にテネシー州ジェームズタウンで「ブタの保護区」(The Pig Preserve)を立ち上げた。ホイル氏は、「最近保護するミニブタの中に、先天異常のあるものが増えている」と指摘する。深く落ちくぼんだ両目、停留睾丸のオス、肛門のないメスなどだ。劣悪な繁殖方法の産物である。ホイル氏が出会う保護されたブタのうち、50~100頭がきょうだいブタの交配で生まれている。

 ホイル氏は、「劣悪な近親交配で生まれたブタ、半ば飢餓状態のブタが保護施設にあふれている」と嘆く。「いわゆるマイクロブタの9割は、2歳を迎える前に死ぬか保護施設に収容されていると思われる」。「マイクロブタ」はミニブタの数多くのニックネームの一つで、ティーカップブタ、ポケットブタなどという呼び名もある。

 しかし、暗い話ばかりではない。こうしたブタの保護施設は増えつつある。

◆飼育に伴う責任

 ラナ・ホレンバック(Lana Hollenback)氏は2008年、ブタの引き取り先を探す個人や保護団体の受け皿として、テネシー州ディアーロッジに「放棄ペット保護・教育センター」(Forgotten Angels Rescue and Education Center)を設立した。最近では、大きくなりすぎた「ミニ」ブタについての電話相談に1日10件ほど対応している。

 冒頭のジェンキンスさんとウォルターさんも、ブタのエスターから目を背けるつもりはない。エスターの成長とともに、世話を続けるという二人の意志も固まっていった。そのため、93平方メートルの現在の家から、エスターや他の家畜の保護施設を開くのに十分な広さの場所に引っ越すことを決めた。今年、40カ国の人々から40万カナダドルを超す寄付が集まり、「エスター安住の保護農場」(Happily Ever Esther Farm Sanctuary)の実現が見えてきた。

 不動産仲介業のジェンキンスさんとマジシャンのウォルターさんは、「エスター効果」が二人を動かしていると話す。1頭のブタが、飼い主である彼らの生き方をいかに根底から考え直させたかを表す二人の造語だ。

「この種のモチベーションが生まれたら、生き方に変化を起こすのは簡単だ」とジェンキンスさんは語る。「僕たちはエスターをとても愛しているから、その世話をライフワークにするのは苦じゃない」。

Photograph by Vincent J. Musi / National Geographic

文=Marissa Curnutte

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