「絶滅両生類再発見」の状況

2014.10.14
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葉の間から顔をのぞかせるマスクド・ツリー・フロッグ(Masked Tree Frog、学名Smilisca phaeota)。コロンビアのチョコ地域にある熱帯雨林で撮影。

Photograph by Robin Moore / National Geographic Creative
 2010年8月、120人を超える科学者たちが5大陸に散らばった。何十年も姿を見せていなかったカエルやサンショウウオなど、「絶滅」両生類を探すためだ。ボルネオ・レインボー・トード(Borneo Rainbow Toad、学名Ansonia latidisca)に至っては、90年近く目撃されていなかったという。 2008年に実施された世界両生類アセスメントでは、多くの種が気候変動や生息地破壊、皮膚を侵すカエルツボカビなどの打撃を受け、159種がすでに絶滅した可能性があることが明らかとなった。

 当時、自然保護団体コンサベーション・インターナショナル(CI)に所属していたロビン・ムーア氏と彼の同僚たちは、こういった生物の窮状に対する認識を高めることを目的とし、“失われた両生類を探して”キャンペーンを発足。世界各国から集まった33の研究チームが6カ月間にわたり、「特に重要な10種」の探索にあたった。

 ムーア氏はキャンペーン中の驚きや成果、落胆を新しい著書『In Search of Lost Frogs(失われたカエルを探し求めて』に記している。

◆4年前にカエルを探したいと思ったきっかけは何ですか? 100年近く確認されていなかったカエルもいるそうですね。

 当時、面白い現象が起きていました。1980年代終盤から1990年代にかけてさまざまなカエルが姿を消し、絶滅が疑われるものもいました。ところが数十年後に再び姿を現し始めたため、興味をかき立てられたのです。

◆カエルは進化的設計の頂点にあると書かれていますが、どのような意味ですか?

 カエルは変化に敏感ですが、5度の大量絶滅を生き延びた生物でもあります。だからこそ、人間が引き金となっている6度目の大量絶滅の先頭に彼らが立っていることは気がかりです。

 進化的設計の頂点というのは、彼らが耐え抜いたという意味です。カエルは現在の姿になってから2億年以上もの間、同じ姿を保ってきたのです。

◆両生類はなぜ苦境に立たされているのですか?

 カエルにとっては非常に厳しい状況が重なっています。カエルツボカビ症は地球史上最も生物多様性に打撃を与える病気とされています。

 この病気に気候変動などの外圧が加われば、カエルにとって致命的です。

 ただし、最大の脅威は生息地の喪失です。カエルツボカビより劇的ではありませんし、見えづらい現象ではあります。

 しかし、カエルの多くは極めて狭い範囲に生息しますから、生息地喪失の影響を非常に受けやすいのです。

◆再発見や新種の発見はありましたか?

 コロンビアでは新種を2種発見しました。

 また、ハイチではそこで20年前から姿を見せていなかった6種がわずか1週間の調査で確認されました。

◆逆にがっかりしたことは?

 ジャーナリストのルーシー・クック(Lucy Cook)氏をコロンビアに呼んでメソポタミア・ビークド・トード(Mesopotamia Beaked Toad、学名Rhinella rostrata)を探すことになり、どうしても見つけたかったのですが叶いませんでした。

 コスタリカではゴールデン・トード(Golden Toad、学名Incilius periglenes)も姿を現すのではないかと淡い期待を抱きましたが、だめでした。

「特に重要な10種」に掲げた種をやっと発見したときは興奮しましたよ。

◆具体的には?

 最初に見つけたのはエクアドルのリオ・ペスカード・スタブフット・トード(Rio Pescado Stubfoot Toad、学名Atelopus balios)です。とても美しい黄色に黒い斑点があるのが特徴です。

 その後、87年間も目撃されていなかったボルネオ・レインボー・トード(Borneo rainbow toad、学名Ansonia latidisca)も確認されました。感動的でしたね。

◆すでに生息が確認されているカエルの保護に専念すべきではありませんか?

 確かにそうですが、そういった生物に対する認識を高め、支援を募る方が困難な場合もあります。このキャンペーンの目標は関心を持たない人々を引き付けることにあり、その点では成功したと思います。

 例えばパンダの保護には、7000種が属する両生類全体の保護のために集まる資金を超える額が投じられています。

 人々がパンダのためにお金を寄付するのは、彼らがパンダに共感できるからです。

 ですが、パンダがいなくなった場合、世界はどの程度変わるでしょうか? カエルがいなくなる方が、世界が大きく変わると私は思います。

◆どういうことですか?

 カエルを失うことは、一度に2種の生物を失うのと同じです。なぜなら、オタマジャクシは水中の藻類の繁殖を調節し、カエルは地上の昆虫を食べるからです。

 また、カエルの皮膚は湿っていて透過性がありますから、それを保護するさまざまな化合物を自ら作り出しています。そういった化合物には多くの薬理作用があることがわかっていて、モルヒネより200倍も強力で副作用のない鎮痛剤も発見されています。

 私は野生のパンダを見たことがないので、漠然とイメージすることしかできません。一方、カエルはどこの裏庭にもいる身近な生物です。私たちの子供やその子供たちが自然界について学び、興味を持つきっかけをもたらしてくれる存在なのです。

Photograph by Robin Moore / National Geographic Creative

文=Jane J. Lee

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