冥王星は惑星か、研究者3人の見解

2014.09.29
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冥王星が惑星か否かをめぐっては、今なお議論が続いている。ハーバード・スミソニアン天体物理学センター が開催したイベントで、この問題に関する議論と投票が行われた。

ILLUSTRATION BY MARC JOHNS
 惑星とはどのような天体をいうのか。そして小さな氷の天体、冥王星は惑星なのか否か。ハーバード・スミソニアン天体物理学センターは先週開催したイベントで、長らく決着のつかないこの議論を改めて取り上げた。 アメリカ、マサチューセッツ州ケンブリッジで開かれた同イベントでは、3人の優れた研究者がそれぞれの見解 を述べた。3人のうち、“冥王星は惑星である”派は2人、“惑星でない”派は1人。彼らの主張を聴いたうえで、 科学者、教師、一般の人々からなる聴衆は投票に参加し、どの惑星の定義を支持するか、また冥王星は惑星だと 思うかどうかを意思表示した。

 その結果、“冥王星は惑星である”とする票が多数を占めた。

 このように一般の間では、惑星の地位を支持されることの多い冥王星だが、国際天文学連合(IAU)は2006年の 総会において“惑星”の定義を見直し、冥王星を惑星の分類から外した。

 その根拠はこうだ。観測可能な太陽系の外縁部では、ほかにも複数の天体が見つかっており、冥王星はそれら 氷の小天体のうち最大のものですらない可能性がある。さらには、まだ発見されていないこのような天体が多数 存在すると考えられる。そのような状況で、冥王星だけを惑星と呼ぶことができるだろうか。

 しかしそうなると、冥王星やその類似天体を新たに分類し、従来からの8つの惑星との違いを説明する必要が出 てくる。

 そこでIAU総会では投票の結果、これらの天体を“準惑星”と呼ぶことに決定し、冥王星はこの新たなカテゴリ ーに属する最初の天体の1つとなった。そのほか準惑星には、小惑星帯に位置するケレス、およびエリス、ハウメ ア、マケマケが分類されている。ハウメアとマケマケは、冥王星と同じく、海王星の軌道の外側にあるエッジワ ース・カイパーベルトという氷の天体の密集地帯に位置する。

 しかしこの“準惑星”は、惑星と名がつきながらも実際には惑星ではない。準惑星はIAUの3つある惑星の基準 のうち2つを満たしている。球形であることと、太陽の周りを公転していることだ。しかし、水星から海王星まで の惑星とは異なり、準惑星は公転軌道を独占し、他の太陽系小天体をその周囲から一掃するだけの質量には達し ていない。

「木星は近隣の天体を一掃している。地球も近隣の天体を一掃している。しかし小惑星帯に位置するケレスは一 掃していない。冥王星も同様だ」と、IAUの小惑星センター副所長ギャレス・ウィリアムズ(Gareth Williams) 氏は述べる。ウィリアムズ氏は今回のイベントに登壇し、IAUによる惑星の定義を提示した。「私の見解では、冥 王星は惑星ではない」。

 IAUの定義では、準惑星は惑星の一種ではなく、いってみれば準惑星という別の種類の天体なのだ。

◆かつては太陽も“惑星”だった

 しかし、“惑星”とは厳密にどのようなものを指すのか。その定義は新たな観測データが増えるにつれて変化 していると、ハーバード大学の天文学および科学史名誉教授オーウェン・ギンガリッチ(Owen Gingerich)氏は 述べる。ギンガリッチ氏は、惑星の定義を行ったIAU委員会の委員長を務めた人物だ。

「“惑星”というのは文化的に定義される言葉であり、その意味はこれまでたびたび変化してきた」と、ギンガ リッチ氏はイベントに登壇して述べた。「今にして思うに、IAUは“惑星”という言葉を定義しようとするべきで はなかった」。

 古代ギリシャの時代には太陽や月も惑星に数えられていたが、その後、コペルニクスが地動説を唱え、太陽と 月が惑星の地位を失った代わりに、新たに地球が惑星の一員となった。さらにその後、ケレスなどの岩石ででき た小ぶりの天体も一時“惑星”とされるが、それでは惑星の数が増えすぎてしまうとして、これらはまた別の名 称で細かく分類されるようになった。そうして生まれたのが“準惑星”のカテゴリーだ。

 惑星の再定義を行ったIAU委員会の委員長を務めたギンガリッチ氏だが、その結果には満足していない。「IAU が“準惑星”というカテゴリーを採用し、それらは惑星ではないとしたのは非常に愚かなことだった。あのよう な結果になったのを残念に思っている」。

◆系外惑星の扱い

 従来の惑星の定義は、あまりにも太陽系を中心としすぎていると指摘するのは、ハーバード大学の天文学者デ ィミタル・サセロフ(Dimitar Sasselov)氏だ。サセロフ氏は、太陽系の外に位置する系外惑星を研究してい る。

 系外惑星の中には、太陽系の惑星と似たものもあるが、まったく異なるものもある。そもそも恒星の周囲を公 転していないものさえある。恒星に縛られずに銀河を漂っているこれらの自由浮遊惑星をなんと呼べばいいの か。それらはなお惑星と呼べるのか。

 サセロフ氏は今回のイベントにおいて、現行のIAUの定義に代わる新たな定義を提案した。惑星とは、恒星や恒 星の残骸が進化する過程で、それらの周囲に形成された、物質の最も小さな球状の塊であるというものだ。

 この定義には、恒星に縛られない自由浮遊惑星、すなわち恒星の周囲で形成され、その後、恒星系からはじき 出されたと考えられる惑星のほかに、冥王星や、冥王星と同類の小さな氷の天体も含まれる。イベントに集まっ た聴衆から、投票で圧倒的支持を集めたのは、このサセロフ氏の定義だった。

 しかし、この定義は、惑星系の構造に関するより大きな疑問に向き合っていないと、カリフォルニア工科大学 の天文学者マイク・ブラウン(Mike Brown)氏は指摘する。ブラウン氏は、冥王星から惑星の地位を奪うことに なった、海王星以遠天体を多数発見してきた人物だ。

「なぜ太陽系は少数の主要な天体と、それらの間に存在する多くの小さな天体とに分かれているのか? 研究者が 積極的に取り組んでいるのは、このような種類の疑問だ」と、ブラウン氏は電子メールでの取材に対して述べ た。

 そのほか、惑星をどう定義するか、冥王星をなんと呼ぶかを議論するのをいい加減にやめて、科学研究を前に 進めるべきだという意見もある。

「(冥王星をなんと呼ぶかは)科学と関係のない気晴らしの話題以外では、大した問題ではない」と、テキサス 州サンアントニオにあるサウスウェスト研究所の天文学者マーク・ブイエ(Marc Buie)氏は述べる。ブイエ氏 は、NASAの無人探査機「ニュー・ホライズンズ」の科学チームのメンバーで、同探査機は2015年夏に冥王星への 接近通過を予定している。

ILLUSTRATION BY MARC JOHNS

文=Nadia Drake

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