インドの再生可能エネルギー事情

2014.09.22
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燃える石炭の煙が空気中に立ちこめている。インド、ジャールカンド州の炭鉱集落で撮影。

Photograph by Robb Kendrick / National Geographic
 インドのナレンドラ・モディ首相にとって就任後初となる公式訪米が間近に迫っている。しかし、直前にニューヨークで開催される国連気候サミットには参加しないという。 今年5月の首相就任直後、モディ氏の党役員がある大胆な宣言をした。1世帯につき最低でも電球1個を点灯できるだけの太陽光発電を2019年までに導入するというもので、今後20年間でエネルギー需要が倍増すると見られているインドで再生可能エネルギーを推進する大規模な取り組みの一環という。

 だが、再生可能エネルギーを大量に導入したとしても、発電量の59%を占める石炭からの脱却という手ごわい課題を避けることはできない。

◆大胆な目標

 今年8月に風力タービン製造業者の会合に出席したインドのピユシュ・ゴヤル電力相は、風力発電量を毎年1万メガワットずつ増やす方針を明かした。

 とはいえ、風力や太陽光発電部門には課題が山積している。国の支援による大規模なプログラムの後押しを受け、インドの太陽光発電量は2011年から2014年までの間に100倍に増加。西部のタール砂漠では、発電量4000メガワットという世界最大の太陽光発電所を建設する計画が持ち上がった。しかし、隣接する湿地帯で冬を過ごすフラミンゴなどの渡り鳥に及ぼす危険性への懸念から、現在は行き詰まっているという。

 また、太陽光発電に関するコンサルティングなどを行うブリッジ・トゥ・インディア(Bridge to India)社によると、太陽光や風力発電を大量に導入したとしても、実際に電力を供給するためには発電所や送電線にも資金を投じる必要があるという。

 一方、一部の団体はより小規模なアプローチに取り組んでいる。環境保護団体グリーンピースは、ダルネイ村で太陽光発電による電化プロジェクトを主導。その結果、同村では出力100キロワットの小規模電力網が450世帯に電力を供給している。

 同団体のアビシェク・プラタプ(Abhishek Pratap)氏は、「エネルギーを作る場所と消費する場所が近いため、エネルギー効率が非常に良い」と話す。

◆意欲が足りない?

 モディ首相率いる政権が7月に発表した年間予算では、再生可能エネルギーの送電に伴う慢性的問題に対処するための資金が割り当てられおり、政府の支援が明確となった。また、運河沿いの小規模発電施設や農家向けソーラー式ポンプなどの開発にも予算が計上されている。

 しかし、予算規模はいくつかの点において控え目ともいえる。例えば、大規模な太陽光発電プロジェクトに資金が割り当てられたのは、インドの29州中わずか4州。ニューデリーに拠点を置く公益調査団体、科学・環境センター(Center for Science and Environment)のチャンドラ・ブーシャン(Chandra Bhushan)氏によると、その資金を小規模な太陽光発電プラント2万台の建設に回した場合、農村地域の4000万~5000万世帯に電力を供給できるという。

◆石炭への依存

 再生可能エネルギーの大量導入に向けた多角的な取り組みにもかかわらず、ゴヤル電力相は石炭使用の継続を明言している。

 国内で採掘された石炭は、インド東部にある生産拠点から西部や南部の消費拠点を結ぶ鉄道で運搬される。しかし、渋滞や高まり続ける需要などにより、国内供給量の80%を生産する国有企業コール・インディア(Coal India)社では生産目標の達成が困難となっている。

 そのため発電所では石炭の在庫が慢性的に不足し、発電能力を下回る電力しか生産できていない。加えて、送電線からの盗電の蔓延などにより、電力損失率は21%を大きく上回っている。

 生産量の低迷や崩壊する鉄道建設計画、高額な輸送費を背景に、インドネシアや南アフリカ共和国からの輸入石炭への依存度は急激な増加傾向にある。

◆資金の使い道

 再生可能エネルギーの生産量や安定供給を強化するだけでなく、国有の電力会社がそういったエネルギーを実際に購入するための手段を講じることも必要だ。

 2010年以降、インドは配電会社や大口の電力消費者に対し、再生可能エネルギーの最低購入量を設定している。2020年までの最低購入目標は15%と掲げられているが、目標を達成できなかった企業への罰則はない。

 また、同国政府は石炭への課税によってクリーンエネルギーの資金を調達しているが、再生可能エネルギーの推進に充てられているのかは不透明だ。

 ブリッジ・トゥ・インディアのアナリストであるジャスミート・クラナ(Jasmeet Khurana)は、次のように述べる。「この資金は目的通りに使われていない。研究と開発のために資金が投じられない限り、大胆な目標を達成することは不可能だ。そうすることで初めてインテンシブ主導の再生可能エネルギー産業が市場主導へと移行するだろう」。

Photograph by Robb Kendrick / National Geographic

文=Shruti Ravindran

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