小さなオスのスニーカー戦略とは

2014.09.19
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カラフルな魚、シクリッド。アフリカのシクリッドの一種L.カリプテルス(写真とは別種)には、オスのサイズに二型がある。

Photograph by David and Micha Sheldon / Corbis
 大きなオスの方が注目を集めがちだが、交配に関して言えば、小さくてこそこそ行動(スニーキング)するオスの方が成功する場合もある。 東アフリカのシクリッドの一種、ランプロローグス・カリプテルス(Lamprologus callipterus)という魚には、オスのサイズに大型、小型の二型があり、小型のオスはがっしりしたライバルの40分の1の大きさだ。

 人間でも体格に違いがあるが、男性がこのシクリッドのように2つの異なるサイズに分かれるということはない。複数の研究で、170センチ以上の高身長の男性の方がデートや仕事では成功するが、離婚率は高いことが示唆されている。

 しかし、タンガニーカ湖のみで見つかっているL.カリプテルスの変異は「最も極端」だとスイス、ベルン大学生態進化研究所の共同ディレクター、マイケル・タボルスキー(Michael Taborsky)氏は話す。「サイズの違いはとてつもなく大きい」。

 9月17日に「Proceedings of the Royal Society B」誌で公表された新研究で、タボルスキー氏のチームはこの大きなサイズの隔たりについて、巻貝の殻の中に産卵するというメスの変わった習性と関連付けた。

 メスを惹きつけるために、大型のオスは口を使って貝殻を何百個も集めて巣を作る。そのがっしりした体格は重い貝殻を運んで回ったりライバルを追い払ったりするには理想的だが、一方で大型オスはメスが集うその部屋に入ることができず、貝殻の外側に精子を放出するしかないのだと、タボルスキー氏は説明する。

 ここで小型の“スニーカー”が登場する。鼻先から尾まで3.4センチしかない彼らは貝殻の中に飛び込んで、身をくねらせてメスのそばを通過、貝殻の渦巻きの奥へと進みメスの卵を受精させる。さらに小型オスは非常に接近できるため、群れを支配するオスよりも受精に成功し多くの子孫を残すことができる。

 今回の研究では、オスのサイズの二型はオスの性染色体上にある遺伝子によって決定されているということが発見された。初めてこのオス多型の遺伝メカニズムがはっきり実証されたと、タボルスキー氏は述べている。

 小型のシクリッドだけが動物界における賢い小男という訳ではない。“スニーカー”と呼ばれる戦略を使って群れを支配するオスをまんまとだます、他の動物たちを見てみよう。

◆女装する鳥

 ヨーロッパからアジアにかけて見られるエリマキシギ(学名:Philomachus pugnax)のオスの中には女装する者がいて、近付いて交尾ができるようメスに擬態している。

 この女装オスは、攻撃性が高く縄張りを持つオスが身に付けている魅力的な繁殖用の羽を諦め、“サテライトオス”として片隅で待ち伏せしている。

 縄張りを持つオスは女装オスを許容するだけでなく、彼らと交尾をすることさえある。詐欺師の変装に気付かなかったか、本物のメスを近くにおびき寄せるためかもしれないと科学者たちは疑っている。

 いずれにせよ、女装オスは追い払われることも攻撃されることもなく、交尾のチャンスを得ることができる。

◆多型のあるトカゲ

 ワキモンユタトカゲ(学名:Uta stansburiana)の場合のように、オス多型は複雑になることもある。この北米のトカゲでは、オスに三すくみの色彩多型がある。

 特に支配的で乱交傾向のあるオスはオレンジ色、青色は家にこもって一夫一婦制のタイプ、そしてスニーカータイプは黄色いメスに擬態している。

 これらの多型の発生頻度は、その異なる交配戦略によって変動する。例えばオレンジ色のオスは青色のオスからメスを奪うが、黄色に女装したオスには逆にやられてしまう。しかし青色のオスは黄色のオスにだまされることはない、といった具合だ。

 どのタイプも全三型の中での相対頻度次第で最善になるため、あるタイプが有利になり、また別のタイプが有利になり、というサイクルが出来上がっている。

Photograph by David and Micha Sheldon / Corbis

文=James Owen

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