10年分の観測データをまとめたこの巨大な最新カタログには、20等級までの暗い星も収められている。20等級というと、肉眼で見える明るさの100万分の1だ。
ここに示した画像は、今回行われた天の川銀河探査のごく一部にすぎない。イギリスにあるハートフォードシャー大学のヘルト・バレンツェン(Geert Barentsen)氏率いる研究チームは、今回の成果が、地球が属する銀河の複雑な構造を解明する手がかりになることを期待している。
もう1つ注目すべきは、このカタログが、地球から見える限られた範囲のみをカバーしている点だ。地球は天の川銀河の中心から伸びる腕の1つに位置するため、何万光年と広がるガスとちりに阻まれ、銀河の反対側にある何百億個もの星は見えない。
◆銀河の衝突
一方で、今週発表された別の研究成果によると、天の川銀河をはじめ、宇宙に存在する渦巻状の円盤部をもつ銀河はすべて、小さな銀河が太古の昔に衝突してできた可能性があるという。
これまでは、銀河が銀河を無残に“共食い”して合体すると、楕円形銀河が形成されるという説が1970年代初めから主流となっていた。
しかし今回、スーパーコンピューターによる最新シミュレーションと、合体過程にある銀河37個の観測データを組み合わせたところ、ガスの雲が明らかな円盤状に集合していることが判明した。これは円盤銀河が形成される初期の兆候だ。
「合体過程にある銀河が今後、円盤銀河に進化しうることを示す観測証拠が初めて得られた」と、日本学術振興会の天文学者で、研究共著者の植田準子氏はプレスリリースで述べている。「今回の結果は、円盤銀河の誕生の謎に迫る、大きく、また予想外の一歩だ」。
よく晴れた夏の夜に市街地の外へ行けば、頭上に広がる天の川銀河が見られる。明るい光の帯に見える天の川銀河は、直径が約10万光年に達し、中心から渦状腕が伸びた、巨大な“かざぐるま”のような形状をしている。
この天の川銀河には、最新の推定で3000億個もの恒星が存在するとみられる。
そして今回の研究により、地球から4000万~6億光年という近傍の宇宙における銀河の衝突は、ほとんどの場合、天の川銀河のような渦巻銀河を含む、いわゆる円盤銀河を形成する可能性が示された。
◆自分の目で見る
われわれの地球が属する星の集まり、天の川銀河のことを知るのに、9月は絶好のタイミングだ。ちょうど北半球から見える夜空の範囲が、天の川銀河、特にその中心部を観測しやすくなっている。
天の川銀河をきれいに見るには、明るい市街地を離れて、田園地帯へ向かうといい。
そして南西の低い空に目を向けると、いて座が地球から約2万8000光年離れた銀河の中心部を示している。
南西の低い夜空に見える最も明るい星は、赤い色をしたさそり座のアンタレスだ。そしてその真東に、見つけやすいティーポットの形をした星の群れがある。これがいて座の中心だ。星の観測に慣れた人でも、いて座のケンタウロスの姿を見出すには多少の想像力が要るが、見慣れたティーポットの形はかなり判別しやすい。
天の川銀河は、そのティーポットの注ぎ口から立ち上る蒸気のように見える。双眼鏡で見ると、その領域全体がきらめく星の宝石に満ちている。
いて座の最大の見どころの1つは、たくさんのカラフルなガスの雲だ。これら巨大な“星の工場”は、天の川銀河の渦状腕の1つに散在している。これらの星雲には、何百もの生まれたての恒星が、まだ高温のガスの毛布にくるまれた状態で存在する。
Image courtesy Hywel Farnhill / University of Hertfordshire