違法伐採めぐりペルー先住民殺害

2014.09.16
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ブラジルとペルーとの国境に近い、アルト・タマヤ川の上流。自分たちの村が所有権を主張する区域を巡回し違法伐採業者を追い出す任務中、小休止を取るエドウィン・チョタ氏。

Photograph by Alex Webb / Magnum Photos
 ペルー中部の都市、プカルパ。ペルーアマゾンの奥地にある川の源流地帯に暮らす先住民たちが、部族の指導者4人の無惨な殺害に対して抗議と絶望の声を上げている。4人は先日、ブラジルとの国境に近いジャングルの中の道で待ち伏せされた。 今月初めに殺害された4人の中には、先住民アシェニンカの村サウェトの指導者エドウィン・チョタ・バレロ(Edwin Chota Valero)氏(54)がいた。

 チョタ氏はカリスマ的な活動家で、麻薬密売や森林の違法伐採シンジケートに対抗していた。こうした犯罪組織は処罰をほとんど恐れることなく、ペルーの人里離れた国境地帯の広い範囲で活動するようになっている。

◆土地所有権の要求

 4人殺害に対する憤りが世界中で高まっている中、ペルーのオヤンタ・ウマラ(Ollanta Humala)大統領は10日、犯人を特定し刑事裁判の場に引き出すため、捜査員を殺害現場に派遣すると発表。犯行を「野蛮な行為」と非難した。

 この10年、チョタ氏はプカルパにあるウカヤリ地方政府に対し、サウェト村がアルト・タマヤ川の上流に広がる712平方キロの地域の法的所有権を得られるよう要請してきた。チョタ氏は所有権の獲得を、サウェトの森林を略奪する違法伐採業者と、抜け穴だらけの国境を越えてコカペースト(精製前のコカイン)をブラジルに運ぶ麻薬密売業者の撲滅に向けた重要な一歩と考えていた。

「我々が所有権を持たない限り、伐採業者は先住民の権利に敬意を払わない」。3年前、ナショナル ジオグラフィックの取材で共に丸木舟に乗り、障害物だらけの森を通り抜けながら、チョタ氏は筆者に語った。

 たくましい体に真っ黒な癖毛、隙間のある歯がのぞく快活な笑顔。チョタ氏は明らかな危険にもひるまず、違法業者に負けないよう人々を力づける天賦の才があった。「奴らは銃を持っている。私たちを脅してくるんだ」。

◆自力での見回り

 チョタ氏は、サウェト村が所有権を主張する土地の境界付近で違法伐採をしようとプカルパから川を上ってくる業者を追い払うのを自らの仕事にしていた。村内の木々が生い茂る谷や、エメラルドグリーンの小川から与えられる恵みの中で、先住民が持続可能な生活を営める環境保護区の設置という目標を根気強く追い求めていた。彼の活動が活発になるにつれ、生命の危険も高まっていった。

 昨年、筆者がナショナル ジオグラフィック誌で報じた通り、チョタ氏はプカルパ郊外のウカヤリ川河岸にある製材所へ警察を案内した。そこにはサウェトで違法に伐採された未加工の木材が積み上げられ、製材を待っていた。

◆「誰かが死ぬだろう」

 不正に伐採した木材を捜査当局が押収した後、チョタ氏と共に殺害された村の会計担当ホルヘ・リオス・ペレス(Jorge Rios Perez)氏は、広い人脈を持つ伐採業者の中心人物が自分たちを標的にしていると証言した。その人物は「サウェトの誰かが死ぬだろう」と警告したという。

 当時、チョタ氏は「今、木材と伐採業者が捜査対象になっている」と書いた。「だが、誰がサウェトの人々とその指導者を危険な伐採業者から守るのか。彼らは武装しているのに」。

 その言葉は、彼を待ち受ける死を予言するかのようだった。チョタ氏はアルト・タマヤの警備と政府による監視を繰り返し求めていたが、何の対応もされなかった。

 チョタ氏と仲間の村人たちが殺害されたのは9月1日。ブラジルとの国境を越えたところにあるアシェニンカの村、アピウチャに向けてサウェトを出発した翌日だ。ジャングルの中の道を2日かけて歩く行程だった。

 リッチモンド大学の地理学教授でサウェトへの助言役を長年務めているデビッド・ソールズベリー(David Salisbury)氏は、周囲の森林に潜む伐採業者はサウェトのアシェニンカ族に対し実力行使の脅迫を続けており、今回の殺害事件後も依然として危険な状態だと指摘する。

 ソールズベリー氏は、「業者は、村人は皆殺すと脅している」と懸念している。

 同氏は森林伐採や麻薬マフィアが、ここ数カ月で大きく弾みが付いたサウェトの所有権獲得手続きを活動の障害とみなすようになったとの見方を示した。

Photograph by Alex Webb / Magnum Photos

文=Scott Wallace

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