空からのゾウ生息数調査、アフリカ

2014.09.05
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セスナに乗り込んだ観察員は、ボツワナ北部、オカバンゴ・デルタの観察区上空から確認したゾウの数を加算していく。「グレート・エレファント・センサス」と名付けられた18カ国に及ぶ調査の一環だ。

Photograph by Kelly Landen
 ボツワナ、オカバンゴ・デルタ。「右にゾウ15頭!」単発エンジンの軽飛行機がうなる中、生態学者マイク・チェース(Mike Chase)氏が叫ぶ。飛行機は急降下を始め、縦一列で氾濫原を横切っていく灰色の動物たちの群れへと近付いた。 私たちは、広大なオカバンゴ・デルタの西の端にある水路や島々の上空を飛んでいる。アフリカ全土で行われているゾウ個体数計測プロジェクト「グレート・エレファント・センサス」(Great Elephant Census)の、ボツワナでの調査に同行させてもらったのだ。

 1年を要するこのプロジェクトは2月に始まり、対象は18カ国に及ぶ。アフリカ全域のサパンナゾウの航空調査としては1970年代以来例がない(中央アフリカと西アフリカに集中する森林ゾウはその多くが上空から視認できないため、今回の調査の対象にはなっていない)。

 この調査はマイクロソフトの共同創業者ポール・G・アレン(Paul G. Allen)氏から出資を受けている。プロジェクトの設立者であり統括研究者のチェース氏は、この調査は差し迫った必要性を満たせるだろうと話す。「アフリカ大陸にゾウがどれだけ残っているのか分からなければ」とチェース氏は問う。「将来の計画を立てようがない。何を基準値とし、どこに注意を払うべきか、集まった寄付金を何に配分すべきか決められない」。

「アフリカのゾウ個体数が現在何頭なのか、依然として分からないというのが実情だ」とチェース氏。「最後に調査が行われたのが15~20年前という地域もある」。

 2007年の報告によると、個体数の推計は47万2000頭から69万頭と幅がある。一方、25万頭しかいないのではないかと考える専門家もいる。

 チェース氏はボツワナに拠点を置くNPO「国境なきゾウ保護活動」(Elephants Without Borders)の創設者でもあり、ボツワナに生息するゾウや他の野生生物の状態に関する前例のないデータ収集にこの15年を費やしてきた。国境をまたぐゾウの通り道を特定したり、新たな移動ルートを発見したりしている。

◆ボツワナはゾウの避難場所

 オカバンゴ・デルタ全体が収まるボツワナ北部は、アフリカ大陸では数少ない、ゾウの個体数が増加している地域の一つだ。オカバンゴ・デルタはオカバンゴ川が潤す内陸のデルタ地帯で、川の水はカラハリ砂漠の砂にしみ込んで蒸発するため、海にはたどり着かない。

 最近の信頼できる推計は、上空からの計測に基づき2010年と2012年に出されているが、大きく開きがある。両者はオカバンゴのゾウ個体数をそれぞれ13万頭、20万7千頭と算出している。

 正確な数がどれだけであれ、オカバンゴに広がる島、水路、氾濫原のパッチワークは、数千頭のゾウや他の野生生物にとって季節に合わせた避難先となっている。他に類を見ないこの地形は今年6月22日、ユネスコの1000件目の世界遺産に認定された。これにより、今後数年でオカバンゴ・デルタは今まで以上にゾウにとって安全な避難場所となるかもしれない。

◆上空からの調査

 調査チームは4人から成る。パイロットに観察員(もしくは監視員)が2人、もう1人が目撃数をGPS機器に取り込む。

 ゾウに加え、バッファロー、キリン、カバの目撃数は複雑なアルゴリズムで処理され、調査範囲の広さと区域の飛行回数も計算に入れる。観察区を細かく設定した抽出調査では標準的な方法で、アフリカの大型草食動物を上空から調べるのに広く使われている。

◆ゾウは「亡命者」

「ボツワナでは密猟の影響がないとよく言われるが、間接的にはあおりを受けている」とチェース氏は指摘する。「ボツワナ国内にいるゾウの多くは、“政治亡命者”だ」。ゾウは密猟が深刻なジンバブエやザンビアといった周辺国から、オカバンゴやさらに南のマカディカディパン(Makgadikgadi Pans)国立公園へ逃れてくるのだという。

 イアン・カーマ(Ian Khama)大統領やそれ以前のリーダーたちの統治下で、ボツワナは政治的にも経済的にも長く安定を保ってきた。

 加えて、保護とエコツーリズムが非常に重視されていることもあり、ゾウが虐げられたり密猟に遭ったりすることはほとんどない。また、2014年初めに公共区域での狩猟が禁止されてからは、遊びで殺されることもない。

「ゾウもまた世界遺産だ」とチェース氏は強調する。「しかし、この生息地は彼らを養いきれない。ボツワナでは、ゾウは市街地、住宅地、農場など、どこでも好きなところを自由にうろつける。国境を超えて隣国に行くこともできる」。

 チェース氏は、ゾウがボツワナで生息域を広げているために人と衝突する可能性を懸念している。「ゾウの数があふれんばかりになっていて、人々はうんざりしている。一方、ゾウはこの国で盛んなエコツーリズム産業の目玉の種でもある。したがって、ゾウをどう保護していくかはボツワナにとって悩ましい問題だ」。

Photograph by Kelly Landen

文=Paul Steyn

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