テッポウウオの狙撃能力の秘密を解明

2014.09.05
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昆虫を撃ち落とすテッポウウオ(学名:Toxotes jaculatrix)。インドネシアにて。

Photograph by A&J Visage / Alamy
 メジャーリーグのピッチャーのように、テッポウウオは水を力強く噴射して獲物を狙うが、口の形を変化させることでこれを可能にしていることが最近の研究で明らかになった。 これまで研究者たちに知られていたのは、単にこの熱帯雨林の魚が狙った獲物に勢い良く水を吹きつけ、その昆虫や小動物を止まっている場所から水中へ撃ち落とし、素早く平らげてしまうということだけだった。

 今回新たな研究で、テッポウウオは想像をはるかに超える技術で水を噴射し、水を道具のように巧みにコントロールできるらしいことが分かった。

◆噴射される水の分析

 テッポウウオの仲間にはテッポウウオ属(Toxotes)の複数種が含まれ、これらはタイやその他東南アジアに生息している。

 獲物に向けて水を噴射するその能力のため、この魚は水族館でも人気がある。ドイツ、バイロイト大学の物理学者ステファン・シュスター(Stefan Schuster)氏も、そうしてこの魚と出会った。

 彼は新しいペットのテッポウウオ(種名:Toxotes jaculatrix)を研究室に持ってきた。この魚の噴射を見ていて、彼はこの新しいオフィスメイトが探し求めていたモデル生物だと気付いた。

 シュスター氏は、テッポウウオが驚くほど力強く水を噴射させることを知った。イタリア、ミラノ大学の物理学者アルベルト・バイラーティ(Alberto Vailati)氏が述べているように、「顔にこの噴射を受けると、虫に刺されたような痛みを感じる」という。

 このように強力な水流を狙いを定めて撃つというのは、見た目ほど簡単なことではない。昆虫を撃ち落とすのに十分な力を生み出すために、この魚は水の力を集結させて強力な一撃にする必要があるだろう。

 シュスター氏と共同研究者のペギー・ゲルリス(Peggy Gerullis)氏は、テッポウウオがどのようにこの技を成し遂げているのかを解明することを決意し、最終的に4年間の過程を費やした。

 研究チームはまず、7匹のテッポウウオの一群を水槽の特定の場所に置いた餌の昆虫を狙って噴射するよう訓練し、高速度カメラを使ってこれを録画すると同時に、水流の力と速度を測定できるようにした。

◆道具を使うテッポウウオ?

 数百時間に及ぶデータを解析し終え、シュスター氏とゲルリス氏は遂に答えを得た。

 水を噴射するとき、テッポウウオは絶えず口の形を変化させ、水流がうまく獲物に向かって発射されるようにしていることが研究で明らかになった。こうすることで、この魚は動く水の性質を本質的に変化させているのだ。

 最も重要なのは、水流の最後に噴出する水は最初の水よりスピードが速いということだ。この事実は、吹き出された水すべてが一気に獲物に衝突し、力を最大化していることを意味している。

 シュスター氏もバイラーティ氏も、テッポウウオが能動的かつ意図的に水の流体力学に影響を与えていることから、これは道具の使用と見なすことができると考えている。

「これは人間が棒を投げるのと似ている」とシュスター氏は話す。「ただ棒を投げるだけなら、何も変化させていないので道具を使ううちには入らないだろう。しかし、棒をとがらせたり枝を取り除いたりするなら、それは道具になる」。

 今回の研究結果は9月4日、「Current Biology」誌で公表された。

Photograph by A&J Visage / Alamy

文=Carrie Arnold

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