シリア難民300万人を待つ過酷な現実

2014.09.01
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ヨルダン、マフラクに近いシリア人のためのザータリ難民キャンプを歩く難民たち。キャンプは既に満杯だ。

Photograph by Ed Kashi / VII
 全シリア人の半分近くが家を追われ、出国して難民となった人々は300万人を超える。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が8月29日に発表した報告書には、内戦が続くシリアの過酷な現状が記されている。 国連難民高等弁務官アントニオ・グテーレス(Antonio Guterres)氏は報告書の中で、シリア危機は「現代の最も大きな人道上の緊急事態となっているが、世界は難民とその受け入れ国からの要請に対応できていない」と訴えた。

 UNHCRによると、過去12カ月だけで100万人以上がシリアを脱出しているが、これは公式に報告された数にすぎない。実際は300万人を超えている可能性がある。

 UNHCRの広報担当エイドリアン・エドワーズ(Adrian Edwards)氏はジュネーブでナショナル ジオグラフィックの取材に応じ、「このおびただしい数は極めて深刻な状況の表れだ」と話した。「今のところ、終わりが見えない」。

 以下、国連報告書の要旨を5項目に分けて紹介する。

◆ 1. シリアの状況は「恐怖の度を増している」

 シリアの状況は急速に悪化している。報告書によれば、いくつかの町で「住民が包囲され、食料が底を尽こうとしているほか、市民が標的にされたり、無差別に殺されたりしている」という。

 UNHCRのエドワーズ氏は「悪い状態が続いているのではない」と話す。「悪い状態が悪化の一途をたどっているのだ」。難民登録された人数は、過去1年だけで100万人を超す。

 1日のうちにも難民の数は膨らんでいく。エドワーズ氏は29日、ナショナル ジオグラフィックの電話取材に応じながらコンピューター画面を確認し、彼のデータでは過去24時間だけで新たに1500人が難民として登録されたと話した。

 一方、シリア国内では物価も高騰している。報告書によれば、シリア北西部の都市イドリブ近郊のある村では現在、パンの値段が1年前の10倍に跳ね上がっているという。

◆ 2. シリア脱出が難しくなっている

 29日のUNHCR報告書は、「武装兵のいる検問が国境沿いに数を増やしており、多くの人が賄賂を強要される」と指摘している。「砂漠を越えてヨルダン東部を目指す難民は、到着までの安全のため、1人当たり100米ドルかそれ以上という高額な料金を密入国業者から要求されている」。

◆ 3. 家を追われた人々の半数以上が子どもたち

 エドワーズ氏はシリアの子どもたちの経験について、「戦争がトラウマとなっているケースに対処している」と話した。

 トラウマに加え、多くの子どもたちは学校に通っておらず、教育を受けるべき大切な年月を奪われている。UNHCRはさまざまな政府、各種機関、団体と協力し、この1年で難民の子どもたち35万人を学校に通わせ始めた。UNHCRはシリアの少年少女たちに対する支援活動を強く求めている。

◆ 4. 難民のニーズに応えるため、周辺国の苦闘が続いている

 難民の大多数は、レバノン(114万人)、トルコ(81万5千人)、ヨルダン(60万8千人)に避難している。しかし報告書は、紛争が始まって以降に登録された300万人の難民以外に、「これらの国々に逃れているシリア人は周辺国政府の推定で数十万人に上る」としている。

 このため、周辺国では経済、インフラ、資源に膨大な負担がかかる事態となっている。

 UNHCR報告書は、シリアから逃れてくる難民のうち重い病気を患う人の割合が増加していると指摘する。例えば、ヨルダンでは最大15%が「糖尿病、心臓病、がんといった長期的な治療を要する病気にかかっていて、母国ではもう十分な医療が受けられなくなったため出国した」という。こうした医療ニーズが、今では難民受け入れ国の肩にかかっている。

◆ 5.周辺国がシリアより安全というわけではない

 難民の多くは比較的安定している国々に保護を求めているが、武装勢力「イスラム国(Islamic State: IS)」による乗っ取りとの戦いが続くイラクに逃れる人々もいる。

 UNHCR報告書によれば、イラク、アルカイムのアル・オバイディ難民キャンプでは「国連機関および国際NGOは、事務所や倉庫を放棄せざるを得なかった」という。このキャンプには数百人のシリア人が閉じ込められており、安否が深く懸念されている。

Photograph by Ed Kashi / VII

文=Eve Conant

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