進行中の大量絶滅が人類に与える脅威

2014.08.27
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テキサス州にあるアランサス国立野生生物保護区内の沼の浅瀬に立つアメリカシロヅル(学名:Grus americana)。1940年代には、このツルはたった15羽しか残っていなかった。現在は600羽前後が生息している。

Photograph by Klaus Nigge / National Geographic Creative
 6500万年前の小惑星衝突で恐竜が地球上から全滅して以来過去にない規模で、今日次々と生物種が絶滅に向かっている。この生物界のハルマゲドン(世界の終末における決戦)は主に人類が引き起こしているものだが、ほとんどの人たちは関心なさそうにあくびをし、肩をすくめてこの事態を受け入れている。 オーストラリアの人類学者トム・バン・ドゥーレン(Thom Van Dooren)氏はその新著『Flight Ways: Life and Loss at the Edge of Extinction』で、我々がいかに生物界とつながっているか、そして生物種が絶滅したとき我々が失うのはただリスト中のひとつというだけではないことを示し、無関心の壁を打ち破ろうと試みている。我々は自身の一部を失うことになるのだ。

 彼は死を悼むカラスと都会のペンギン、インドのハゲワシについて話してくれた。

◆私たちは大量絶滅の時代に生きています。状況はどのくらい悪いのでしょうか?

 私たちが第6の大量絶滅の時代に生きているという考えは、今やかなり広く受け入れられていると思います。第5の絶滅は6500万年前、恐竜が姿を消したときです。現在、私たちはそのときと同じくらいの速さで生物多様性を失いつつあります。そしてその主な要因は、人間社会です。

 種を失うことは単にリストに挙げられる概念上の生物を失うというだけではなく、文化的、社会的関係が破綻し、世界へ様々な影響が波及することにつながります。

◆それにもかかわらず、一般市民が上げる声は非常に小さいとのことですね。あまりにも大きな危機なので、人々は途方に暮れてしまっているだけなのでしょうか?それとも?

 途方に暮れてしまっている人々もいるでしょう。ですが、ほとんどの人たちはただ純粋に、私たちが今経験している生物多様性を失う速さについて気付いていないだけだと思います。

◆「都会のペンギン」についてお話しして頂けますか?

 オーストラリア本土に残った最後のコロニーのひとつが、たった60~65ペアのつがいなのですが、オーストラリア最大の港であるシドニーに生息しています。フェリー埠頭の下に巣を作ることもありますが、気付かない人も多いです。このペンギンは体高30センチほどの小さな美しい鳥で、有史以来ずっとこの地域に来ています。ペンギンが夜イヌやキツネに攻撃されないよう見張っている自然保護活動家やボランティアのペンギンパトロール隊の献身的な活動のおかげで、なんとかやってこられています。

◆悩みのひとつが人間例外主義というものだそうですが、これはどういったものですか?

 これは哲学者が使う概念で、人間は他の自然界とは区別される存在だとする考え方を表すものです。

◆万物の霊長という?

 その通りです。少なくとも西欧社会では、私たち自身動物であるという考え方よりも、自分たちは不滅の魂を持つ唯一の存在であるとか、合理的精神と世界を操り支配する能力を持つことで区別される特別な生き物だというような考え方が長い歴史の中で存在してきました。

 人間例外主義の原因を分析することで、人間を「生命社会」に立ち返らせる試みが可能になります。

◆絶滅は私たちに複雑な影響を与えます。インドのハゲワシについてお話しして頂けますか?

 ムンバイのゾロアスター教徒、パールシーの社会では、伝統的に死者を「沈黙の塔」と呼ばれる場所に置いてハゲワシの前にさらしますが、現在ハゲワシは姿を消しつつあります。推計では、この数十年で97~99%のハゲワシがいなくなったと見られています。そのため、パールシーの社会はとても難しい状況に置かれています。ハゲワシがいなくなった世界で、どのように適切かつ敬意を持って死者をケアするのかを解決しなければならないのです。

 ハゲワシは、様々な種類の病気を封じ込め、また死体を食べ別の病気を蔓延させるネズミやイヌのような肉食動物の数をコントロールするという重要な役割も担っています。今心配しているのは、ハゲワシが減少することで死体を食べる動物の数が増え、インドで狂犬病や炭疽症などの病気の発生率が上がるおそれがあることです。

◆ハワイガラスの章で、種を失うことを悼むことの重要性についても述べられています。実際にカラスは死を悼むのでしょうか?

 はい、カラスやその他多くの哺乳類が仲間の死を悼むということを示唆する十分な証拠があると思います。これは一部には人間例外主義の問題、つまり死を悼むのは人間だけだという考え方とも密接に関わっています。しかしカラスが仲間の死を悼むということは、世界中様々な種の観察結果から明らかです。カラスは死に気付き、死にショックを受けます。この章に触発され、私たちの周りで起こっている絶滅の全てに注意を払い、それらから学ぶという難題に挑み、ある意味この世界で違う生き方ができる存在になれればと願っています。

Photograph by Klaus Nigge / National Geographic Creative

文=Jennifer S. Holland

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