洋上風力発電で海底ケーブルの需要増

2014.08.27
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ドイツ北海のダン・ティスク風力発電施設で風力タービンを設置する船。海底ケーブルは、新たな洋上風力発電エネルギーの送電法として急速にその需要が高まっている。

Photograph by Carsten Rehder/DPA/Corbis
 ドイツ北海では、現在80基の風力タービンが建設中で、完成すれば約40万戸分の電力を十分に供給できる施設となる。発電されたエネルギーは、数キロに渡って海底に敷設された最先端のケーブルを通って送電される。電力の輸送にこのような海底ケーブルを使用する動きは、近年急速に成長している。 海底電力ケーブルは、1800年代初めには既に存在していたが、これまではほとんどの場合、石炭火力発電など従来の方法によって発電された電力を国同士の間で、または離島や石油プラットフォームへ送る目的で利用されるにとどまっていた。

 ほんの10年ほど前まで、海底ケーブル産業は下降傾向にあった。風向きが変わったのは2000年代半ば、エネルギー価格の上昇と気候変動への懸念から、洋上風力発電の開発とより効率的な多国籍電力網への関心が高まった。

 この10年間で、海底電力ケーブルの世界市場は急速に拡大し、今後も成長を続けるだろうと業界の観測筋は見ている。コロラド州ボールダーに本拠地を置きエネルギー産業の動向を見守るナビガント・リサーチ(Navigant Research)社が2013年11月に発表した報告書では、高電圧海底電力ケーブルの世界的売り上げは今後10年間で3倍近くに増加し、2014年には19億ドルの売り上げが2023年には53億ドルになるだろうと予想している。

◆海上の風力エネルギーを陸上へ

 3億4000万ドルを投じ、ドイツ北海デンマークとの国境にあるダン・ティスク風力発電施設で建設中の海底送電ケーブルは、全長159キロに及ぶ。建設に当たっているイタリアのケーブル製造会社プリズミアン・グループ(Prysmian Group)は他にも、11億ドルを投じてスコットランドとイングランドの電力網を結ぶ385キロの海底ケーブルをアイリッシュ海の底に敷設する、大掛かりな「ウェスタンリンク」計画にも参加している。カナダも、ラブラドルからノバ・スコシアへ水力発電エネルギーを輸入するため、15億ドルの海底ケーブル建設へ向けて動き出している。

 このように海底を通して国同士が繋がれば、各国の電力使用の効率化を助け、遠方の再生可能資源を活用し、同時に陸上の自然環境保護にも繋がると、プリズミアン社のアメリカ支社で海底ケーブル事業部長を務めるジュリアン・ピース(Julian Pease)氏は話す。

 ピース氏によれば、風力発電はケーブル市場の60%を占めている。沿岸までの長い送電線に加えて、200台の風力タービンを有する風力発電施設では、全てのタービンを繋ぐケーブルが最長で200キロ必要であると見られる。

◆環境への影響は未知数

 オスパール条約(北東大西洋の海洋環境保護に関する条約)が2009年に発表した報告によると、海底の地中約2メートルにケーブルを埋めるには、特別に設計された船舶とロボット車両が必要で、環境へのある程度の影響は免れないという。ケーブルは人工的な環境を作り出し、周辺海域には通常存在しない生物を呼び寄せることがある。「ただし、変化はそれほど顕著なものとはならないだろう」と報告書は述べているが、十分な研究がまだなされていないため、ケーブルから発生する電磁場や熱が海洋生物に与える影響が、もしあるとしてもどのようなものになるのかは予測が付かないとしている。

 一方海底ケーブルの支持者は、陸上でのエネルギーの効率化を図り温室化ガスの排出を削減すれば、長期的には天秤はプラス方向へ傾くだろうと主張する。その良い例の一つが、ノルウェーとオランダ間を結ぶノーネッド(NorNed)という580キロの海底ケーブルである。これを通して、ノルウェーの水力発電エネルギーが需要の最も高い昼間にオランダの消費者まで届けられ、ノルウェーの方もオランダの石炭火力発電所から必要に応じて電力を受けている。ケーブル製造会社のABBによれば、この連携による効率化で、二酸化炭素の排出量は年間で170万トン近く削減されたという。

 しかし、いくつかの問題がこれからの海底ケーブルの成長を妨げる可能性があると、ナビガント社の研究責任者ボブ・ロックハート(Bob Lockhart)氏は言う。ケーブルを敷設する際、各国がその領海に独自に設けている複雑な規制を潜り抜けるのに何年もかかって、計画が遅延する可能性がある。さらに、もうひとつの重要なステップである海底調査を実施できる専門企業も比較的少なく、ケーブル敷設に特別仕様された船舶の数も同様に限られている。

Photograph by Carsten Rehder/DPA/Corbis

文=Patrick J. Kiger

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