7万5000人がひしめき合って暮らす海辺のスラム街、ウェストポイントで住民を威嚇するリベリア国軍のエボラ対策部隊。住民たちは強制的に隔離されている(モンロビア、8月20日)。

Photograph by John Moore / Getty
 エボラ出血熱の勢いは止まらず、西アフリカでこれまでに1350人以上の死者を出す史上最悪の事態となっている。大流行を食い止めるべく大規模な取り組みが行われているが、その結果、リベリアでは異様な事態が起きている。リベリア政府は19日、首都モンロビアにあるスラム地域の隔離に踏み切り、その結果、怒った住民と当局の衝突が起きた。 先週、暴徒らの手で隔離施設から“解放”された患者を連れ戻し、午後9時から午前6時までの外出禁止令を全国で施行。さらには、エボラ出血熱が西アフリカで猛威を振るっているという話はデマだとする悪質なうわさとも闘わなければならない。これら全てに対応するだけの力を、リベリアの公衆衛生当局はそもそも持ち合わせてはいなかった。

 対策チームの経験豊富なメンバーに言わせると、リベリアの状況は“悪化の一途”をたどっているということだ。一方で、国境なき医師団は、モンロビアは“破滅的な”状況にあると語っている。リベリアでは、患者数、死者数ともに他の国々よりも多くなっており、死亡した患者はこれまでに576人に昇っている(ギニアでは396人、シエラレオネでは374人)。また、医療従事者のウイルスへの感染も数十例報告されている。

◆感染の拡大

 エボラウイルスは1976年にコンゴ民主共和国で初めて確認され、これまでにアフリカ全土でたびたび影響を及ぼしてきた。2014年3月に世界保健機関(WHO)がエボラ出血熱の感染例の報告を開始して以来、ギニア、シエラレオネ、リベリア、ナイジェリアの4カ国で合計2473件の感染、1350件の死亡が記録されている。飛行機での移動を禁止する措置に踏み切った国も複数存在する。

 国境なき医師団によると、体調不良や恐怖心から職場を離れる医療スタッフが続出したことで、ほとんどの国で病院が閉鎖され、路上や住宅に遺体が放置されたままの状態だという。

 今回の大流行の影響を受けている国々では、感染の拡大を封じ込めようと隔離区域が設けられた。リベリアでは軍隊を派遣し、隔離区域の警備を強化している。リベリア、ギニア、シエラレオネの隔離区域では、現在100万人以上が暮らしている。

 しかし、食料や物資が区域内に届かないのではないか、困窮した住民が隔離区域からの逃走を試みるのではないかといった懸念が広がっている。

◆流行の中心地

 リベリアでの大流行を食い止めることが、ひいては西アフリカ全体での大流行を食い止めることにつながると考えられている。国境なき医師団のジョアン・リュー(Joanne Liu)会長は、現地での10日間の視察を終えた後、15日にジュネーブで記者会見し、「リベリアでの流行の沈静化なくして、西アフリカでの沈静化はありえない」と語った。

 リベリアのルイス・ブラウン(Lewis Brown)情報相は今週、ナショナル ジオグラフィックの取材に対し、「我々はこの戦いに打ち勝つことができると信じている」と話した。「早い段階で流行の中心地であるとの判断を下していたいくつかの地域で、その兆候が現れはじめている。今、問題なのはモンロビアだ」。

 しかし、先週末、その問題は頂点に達することとなった。モンロビアの住民の集団がウェストポイントと呼ばれるスラム街にある隔離施設を襲撃し、感染が疑われる患者少なくとも17人とその親族を連れ出し、汚染されたベッドやその他の医療器具を持ち去ったのだ。ブラウン情報相によると、17名は全員発見され、モンロビアのジョン・F・ケネディ医療センターに輸送されたという。しかし現在、ウェストポイントの5万人の住民は隔離状態に置かれている。

 ある人は、先週末の隔離施設襲撃の際、暴徒らが患者に触れたり、抱き抱えて連れ出したりする様子を目撃し、恐怖におののいたという。エボラ出血熱の感染を抑えるには、患者との接触を避けることが何より重要だからだ。

 モンロビアに住む24歳の大学生モハメッド・ファビオ(Mohammed Fobio)さんは、インターネット新聞「World Post」に掲載された投書のなかでこう語っている。「愛する人が死んだとしても触っては駄目だ。遺体に近づくのも、病気の父親に触れるのも、一切避けなければならない」。

 モンロビアの現状についてファビオさんは、「通常の状態の市民が医療を受けることもままならない、まったくひどい状態だ」と述べている。

Photograph by John Moore / Getty

文=Dick Thompson