インドネシアでは初めて、飼育下において生まれたスマトラサイのアンダトゥが、自分について書かれた本と対面する。

Photograph by Bill Konstant / International Rhino Foundation
 ブルックリン、パークスロープにあるニューヨーク市立ジョン・W・キンボール(John W. Kimball)第107小学校の5年生が作成した絵本『One Special Rhino: The Story of Andatu(特別なサイ:アンダトゥの物語)』は、2012年に誕生したスマトラサイの赤ちゃんが主人公として登場し、その物語を通してサイの保護をめぐる問題を取り上げている。 インドネシア、スマトラ島のウェイカンバス保護区で誕生したアンダトゥの存在意義は、いくら強調してもしきれないほどだ。様々な試みの末に生まれたアンダトゥは、インドネシアで初めて、飼育下で誕生したスマトラサイである。その属する種の将来に希望の光をともした出来事だった。

 2007年以降、癌(がん)や精力向上に効果的であるとの誤った情報により、サイの角を狙った闇市場がアジアで爆発的に拡大し、密猟がはびこるようになった。

 中でもスマトラサイは、現在残っている5種のサイの中でも最も危機的状況にある。専門家によると、その数は過去20年間で50%も減少し、現在世界で100頭も生存していないだろうと見られている。

 第107小学校がアンダトゥとスマトラサイの保護に関わるようになったのは2012年、国際サイ基金(IRF)による年に一度の資金集めのイベント「シンコ・デ・ライノ」の案内が私の目に留まったことがきっかけだった。

 私の子どもは第107小学校付属幼稚園へ通っており、フルタイムのジャーナリストである私はある日、締め切りの合間を縫って、拙いサイの絵を貼り付けた募金箱を持って学校の外に立つことにした。

 一日の終わりに募金箱を開けてみると、合計500ドル以上が集まっていた。これをきっかけに1人の保護者が協力を申し出てくれ、あれよあれよという間に、PTAによる委員会「ビースト・リリーフ」を立ち上げることになった。

◆協力者が集まる

 様々な分野で活躍する保護者たちの協力を受け、私たちは全校児童が参加するアート・プロジェクトを実施することになった。使い終わったコーヒーカップやホルダーを再利用してジャワサイの貯金箱を作ったり、アンダトゥがナレーターを務める「The Secret Lives of Rhinos(知られざるサイの生活)」と題したYouTube動画を作成した(4年生の児童が、アンダトゥの声を演じている)。

 動画上映にあたっては、IRFのプログラム責任者ビル・コンスタント(Bill Konstant)氏が学校を訪れて、子どもたちに講演を行った。

 子どもたちのアンダトゥへの熱意を目にしたコンスタント氏と私は、次のプロジェクトとして本を制作することを提案した。

 そこで、84人の5年生を、執筆担当、イラスト担当、デザイン担当の3グループに振り分けた。資料はIRFから提供を受けた。子どもたちからは、密猟者、インドネシア、アンダトゥの家族、などといったトピックが提案された。

◆子どもの目線で

 読むものの心を打つ一風変わったこの本は、密猟の現状について子どもたちの目線から語られている。また、写真やイラストを使って、サイの日々の楽しみを紹介している。食べる、泥の中を転げまわる、母親と過ごす、また食べる。「たくさん食べたおかげで、生まれた時に27キロだった僕の体重は、1年後には400キロ以上にまでなっていたんだ」と、本の中のアンダトゥは語る。

「仲間がとても少ないから、一緒に遊ぶ友達が見つけられなくてとても悲しいよ。だから、僕のことをみんなに知ってもらって、助けてもらいたいんだ」。

◆次世代の保護活動に向けて

 この本をきっかけに、他の学校や児童たちの間でも、サイやその他の絶滅危惧生物への関心が高まることを期待したい。あふれんばかりの好奇心と思いやりの心を持ち、不正を見ればそれを理解し、無邪気に動物を愛する子どもたちは、野生生物保護の力強い擁護者となってくれるだろう。

「今まさに絶滅の危機に瀕している動物たちについて、政治的主張や役所仕事とは無縁の目線から書かれたものを読むのは心が洗われるようだ」とコンスタント氏は話している。

Photograph by Bill Konstant / International Rhino Foundation

文=Brad Scriber