“ピグミー”の身体的特徴は遺伝子由来

2014.08.20
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ウガンダのブウィンディ原生国立公園内の森林に暮らす民族集団、バトワの人々。彼らの成人は、近隣の部族に比べて平均身長が10センチ近くも低い。

Photograph by Andrew Aitchison / In Pictures / Corbis
 アジアやアフリカの熱帯雨林には、平均身長が非常に低い狩猟採集民が複数の集団に分かれて暮らしている。最近、彼らの小柄という身体的な特徴の要因を遺伝子レベルで解析した研究結果が発表された。 アフリカ中央部の熱帯雨林で暮らすいくつかの狩猟採集部族は、近隣の農耕部族に比べて身長が極端に低い。研究対象となった東部のバトワ(Batwa)と西部のバカ(Baka)は、どちらも従来から“ピグミー”と呼ばれている集団に含まれている。ちなみにピグミーの由来は、ギリシア神話中に現れる小人族の名まで遡るという。

 彼らの身体的特徴の根本的な要因については、従来から様々な説が存在する。しかし今回、カナダ、モントリオール大学のルイス・バレイロ(Luis Barreiro)氏を中心とする研究グループが、バトワとバカのゲノムを解析し、近隣部族との比較を試みた。その結果、どちらの集団にも、ヒト成長ホルモン受容体および骨形成にかかわるゲノム領域に変異が見られる事実が明らかになった。

「低身長の形質が遺伝子に由来することを示す、最も有力な証拠だ」とバレイロ氏は話す。

 ヒトの身長は変異しやすい形質だが、アジアやアフリカの熱帯雨林に暮らすいくつかの集団はその身長の低さがあまりに際立っている。例えばバトワの平均身長は、男性が152.9センチ、女性が145.7センチである。近隣に暮らすバキガ(Bakiga)族の平均身長、男性165.4センチ、女性155.1センチと比べれば、その差は歴然としている。

 身長的特徴の要因を生活環境に求める研究者もいる。多様な生物が生息している熱帯雨林だが、食料採集生活にとっては非常に困難な環境でもある。つまり、単なる栄養不足が低身長の要因とも考えられるわけだ。

 一方、バレイロ氏のように、遺伝子変異が低身長の形質をもたらす要因と考える研究者もいた。根拠の1つが、熱帯の多湿な環境では、小柄なほど体温の異常上昇を防ぎやすいという事実だ。またバレイロ氏が発表した従来の研究論文で明らかにしているように、熱帯雨林を移動する際はさまざまな障害物を避けなければならないが、それには多大なエネルギーを要する。小柄であれば移動に要するカロリーの消費量も少なくて済むのである。

◆顕著な遺伝子変異

 バレイロ氏らの研究グループは、バトワとバカの両集団と、平均的な身長を持つ近隣の3つの農耕部族から遺伝子データを収集し、さまざまなゲノム領域の解析を行った。そして両集団のヒト成長ホルモンの受容体に関わるゲノム領域に、顕著な遺伝子変異が認められる事実を突き止めた。

 さらに詳しく解析を進めると、両集団の遺伝子変異は完全な偶然の産物であり、始祖たちはたまたま身長が低くなったにすぎないと判明。ただ、その遺伝子変異が、熱帯雨林の環境で暮らす彼らにとって有利に働いたことだけは確かだろう。バレイロ氏によると、同一の形質(低身長)が異なる集団間で独立に発現したという点で、これは収斂進化の一例になっているという。

 どちらの遺伝子変異も、発現した時期についてバレイロ氏らの研究グループは比較的最近と見ている。しかし、あくまで独立して発現したという事実は、低身長の要因がかなり強力で、しかも短期間の間に影響をおよぼした可能性が高いことを示している。

 小柄な民族集団を産んだ要因に迫った今回の研究は、人類の持つ豊かな多様性がどのように培われてきたのかを理解するうえで大きな手掛かりとなるだろう。

 今回の研究結果は、「Proceedings of the National Academy of Sciences」誌オンライン版に8月18日付けで掲載されている。

Photograph by Andrew Aitchison / In Pictures / Corbis

文=Carrie Arnold

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