動物の奇形:3つ目のカニ、双頭のカメ

2014.08.06
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
上は、ニュージーランドで見つかった沢ガニAmarinus Lacustrisの奇形。下は、2006年に中国の青島で発見された珍しい双頭のカメ。市場でこれを発見した所有者は取材当時、カメは健康で普通のカメよりもよく食べると報告している。

Photographs by Stephen Moore and Gerhard Scholtz; (below) ChinaFotoPress / Getty Images
 目が3つ、鼻が2つ、頭から触覚が1本生えている生き物がニュージーランドで見つかった。8月に「Arthropod Structure & Development」誌で紹介されたヤワラガニの一種で、学名Amarinus Lacustrisと呼ばれる沢ガニの珍しい奇形だ。「3つ目」のカニの奇妙な体と脳の異常は、複数の奇形が重なった結果だと思われる。まず、体の一部が2匹分存在するというシャム双生児(または結合双生児)の特徴として、第3の目がついている。また、カニは目を損傷すると新しい目を再生する能力があるが、それがこの場合はうまく再生できずに触覚となって生えてしまった。

 自然界は完璧ではない。普段とは違ったことが起こる場合もある。科学者にとってこうした異常は、ただ興味深いだけでなく、貴重な研究資料となる。

 3つ目ガニの筆頭研究者で、ベルリンにあるフンボルト大学のゲアハード・ショルツ(Gerhard Scholtz)氏は、「自然界で発生した奇形は何が可能であるかを我々に教えてくれる」と話す。「これらを研究することは、過去の失敗から学ぶようなものだ。なぜ奇形が発生したか、その原因と構造を理解すれば、通常の発達についても原因と構造を理解することができる」。

◆突然変異

 遺伝子の突然変異が悪い結果をもたらし、死に至る場合もある。自然界の掟として、こうした遺伝子は消滅していく運命にある。しかし、中にはその個体に競争的利点を与えて生存の可能性を高め、生き残っていくものもある。

 動物に発生する奇形は遺伝子だけが原因ではない。例えば、体の一部の発達するタイミングにほんのわずかズレが生じただけで、様々な結果がもたらされる。

 環境が影響することもある。例えば爬虫類の卵は、孵卵期の温度によって性別が変わってくる。そして温度が高すぎると、頭部が2つに成長してしまう。

 しばしば奇形は、1つだけでなく複数の要因が重なって起こることが多いと、『Freaks of Nature』の著者でアイオワ大学の神経科学者マーク・ブルムバーグ(Mark Blumberg)氏は言う。「現在我々が普通だと思っている動物の体の構造、例えばゾウの長い鼻やメスのハイエナの大きな生殖器は、もしかしたら環境の変化に応じて進化の過程で生まれ、それが動物の発達を変化させてきたのかもしれない」。

 しかし、「科学者の中には、遺伝子変化は進化を牽引しているのではなく、後からついていくものだと考える者もいる」と、ブルムバーグ氏は付け加えた。環境、遺伝子、発達過程、そして時間などが相まって全く新しい動物が生まれるのだという。

◆単眼症のヒツジ

 1950年代、アイダホのヒツジ農場で、額の真ん中に目が一つだけしかない単眼症の子ヒツジが生まれ、関係者を驚かせた。子ヒツジたちの脳も、未発達の状態だった。

 原因は花にあった。乾期にヒツジたちが食べていたバイケイソウに含まれる物質が、胎児の成長を妨げてしまったのである。

 後に、科学者たちはその原因となった物質を突き止め、シクロパミンと名付けた。シクロパミンは、胎児の発達に不可欠な遺伝子の活動を妨げるが、近年になって、癌(がん)の治療薬としても研究の対象となっている。

◆白眼のハエ

 進化生物学者で発生学者のトーマス・ハント・モーガン(Thomas Hunt Morgan)氏は、培養していた通常の赤眼のハエの中に白い眼をしたショウジョウバエを発見し、それを研究して、染色体が遺伝にどのような役割を果たしているかを理解する手がかりをつかんだという。

Photographs by Stephen Moore and Gerhard Scholtz; (below) ChinaFotoPress / Getty Images

文=Jennifer S. Holland

  • このエントリーをはてなブックマークに追加