チョウの翅の色、数世代で急速に進化

2014.08.05
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上は交配前のビシクラス・アニナナ(Bicyclus anynana)。下は、交配前(左)と交配から6世代後のB・アニナナの翅。交配後、翅に紫色を反射する鱗粉が発達した。

Photographs courtesy of Antonia Monteiro
 アフリカ原産の茶色いチョウを交配すると、わずか6カ月から1年の間に翅が紫色に変化することが、研究チームによって証明された。 チョウの翅は環境の変化に敏感で、色が環境によって変化することは知られているが、その仕組みについてまだ解明されていない。

「このように速く進化するとは、実に驚くべき結果だ」と、イェール大学の物理学者で研究の共著者ホイ・カオ(Hui Cao)氏は語る。

◆本来の色

 研究チームは、実験室で寿命2カ月ほどのジャノメチョウの一種、ビシクラス・アニナナ(Bicyclus anynana)を交配した。交配前、顕微鏡を使って紫の波長をよく反射する個体が選ばれている。

 進化を真似て数回にわたって交配が繰り返され、ついに紫色の翅を持つチョウが誕生するに至った。

 顕微鏡でその翅を観察すると、鱗粉が紫の波長を反射するように特定の厚みに変化していたことがわかった。

 次にチームは、このB・アニナナと紫色の翅を自然に進化させた同属の遠類2種を比べることにした。観察の結果、実験室でも自然界と同じような進化のメカニズムが働いていることが明らかになった。つまり、3種とも同じ厚みの鱗粉を持っていたのだ。

◆異なる色のチョウ

 動物が体の色を変化させるには、2通りの方法がある。1つは色素自体の変化で、これには相当のエネルギーを要する。もう1つは、翅や光を反射する部位の構成を微妙に調整する方法である。

 今回の実験では、翅自体を変化させることで、チョウは比較的楽な方法を選んだ。「そうすることで、より速くかつ容易に環境の変化に順応することができるのだろう」とカオ氏は説明する。

 コーネル大学の昆虫学名誉教授マーク・スクライバー(Mark Scriber)氏は、「この論文は、色に関わる下部構造の進化が色素よりも速く行われることを見事に証明するものだ」と話している。

 フロリダ自然史博物館でチョウを専門にするアンドレイ・ソラコフ(Andrei Sourakov)氏は、「虹色に輝く色彩はチョウにとって重要な特徴であり、今回の研究はその理解に大きく貢献するだろう。同じ結果を生むために、自然はいくつかの方法を持っている」と語る。

◆翅がカラフルな理由

 チョウが色鮮やかな翅を持つ理由は、チョウ同士のコミュニケーションと外敵から身を守ることに関係するだろう。

 スクライバー氏によると、多くの昆虫が棲む環境では、オスとメスが互いを識別しあうのに特定の色が役立っているようだ。

 またカオ氏は、茶色い翅を持つチョウの多くは森に生息し、背景と一体になりやすいと説明する。一方、紫色のチョウは開けた場所に生息し、ぎらぎらと光るその翅で外敵を撹乱する。

 将来的に、この研究の成果が、色を迅速かつ効率良く切り替える電子書籍リーダーなどの電子機器の開発に役立つかもしれないとカオ氏は期待している。

 研究結果は、8月4日付で「Proceedings of the National Academy of Sciences」誌に掲載された。

Photographs courtesy of Antonia Monteiro

文=Christine Dell'Amore

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