9・11跡地の木造船、建造年代を特定

2014.08.01
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世界貿易センター跡地から出土した船の残骸。1770年代初めに伐採された木材で建造されたことが判明した。

Photograph courtesy Lower Manhattan Development Corporation
 2001年のアメリカ同時多発テロで崩壊した世界貿易センター(WTC)跡地から出土した遺物が、アメリカ独立戦争時代のフィラデルフィアと驚くべきつながりがあることが分かった。発見の鍵を秘めていたのは、年輪だ。 2010年、ニューヨーク市ロウアー・マンハッタンの掘削業者が、地中深く埋められていた木造船の残骸を発見した。最新の研究で、この船はペンシルバニア州南東部の原生林から1773年前後に切り出された木材で建造されたことが判明した。

 ニューヨークにあるコロンビア大学の年輪年代学者で、今回の論文の首席著者エドワード・クック(Edward Cook)氏によれば、独立記念館などフィラデルディアにある独立戦争時代の建築物に使用されている木材と、年代も伐採地もほぼ同じだという。

 出土した船は、スループと呼ばれる1本マストの帆船の一種だ。木材が切り出されて間もなく、フィラデルフィアの小規模な造船所で建造された可能性が高い。

 約20年後の1790年代、船は廃船にされた。船体はハドソン川の河原を拡張するための埋め立て材に使われ、急速に発展していた都市・ニューヨークに新たな土地を造成する土台となった。

 このような情報が、腐敗しつつある木材の山からどのように取り出せたのだろうか。

「船の建造年代を正確に特定できたのは、年輪年代法のおかげだ」とクック氏。「木材を船から取り出せたことで、年輪の分析が可能になった」。

◆年輪が来歴を語る

 WTC跡地での発見の場合、船はヒッコリー、トウヒ、マツ、オーク材で造られていた。中でもクック氏らの調査チームは、船の骨組みに使われていたホワイトオークの板に見られる年輪に注目した。

 ホワイトオークは北アメリカ東部の各地で生育しているが、研究者らはノースカロライナからマサチューセッツにかけてホワイトオークの年輪がどのような連なり方をするかという情報を既に持っていたため、伐採地をより正確な地点に絞り込むことができた。場所が判明している年輪と、船の木材に含まれる年輪の出方との比較により、産地がペンシルバニア州南東部と特定された。

 最も古い年輪は1400年代後半、コロンブスが新世界へと処女航海を行った時期と判明。そして、木が伐採された年にできた最も新しい年輪は1773年のものと特定された。ボストンの人々が、名高い「ボストン茶会事件」を起こした年だ。

◆短かった稼働期間

 完成した船は「デラウェア川を下り、さまざまな用途に使われたのだろう。そして、マンハッタンに運ばれて解体された」とクック氏は推測している。

 船が出土したロウアー・マンハッタンの地点は1790年代に埋め立てられた。したがって、この船が現役で使われていたのはおそらく10~20年程度とみられるが、稼働期間が短かった理由は必ずしも明らかではない。

 発掘の後、船はメリーランド州セントレオナルドの州立考古学研究所(Archaeological Conservation Laboratory)に移され、クック氏らの調査チームが年輪サンプルを採取した。

 歴史を語るこの帆船は現在、ニューヨーク市内の博物館で展示するため、準備が進められているという。

 今回の研究成果は、米誌「Tree-Ring Research」7月号に掲載された。

Photograph courtesy Lower Manhattan Development Corporation

文=Katie Langin

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